契約書を交わさないで契約するとどうなるのか

ビジネスでも日常生活でも、「契約」は避けて通れません。
しかし、口頭での約束やLINE・メールのやりとりだけで取引を進めてしまう人も少なくありません。
では、契約書を交わさなかった場合、法律的にはどうなるのでしょうか?


目次

1. 口頭でも契約は成立する

まず知っておきたいのは、契約書がなくても契約自体は成立するということです。
日本の民法では、「当事者の合意」があれば契約は成立します。
つまり「これを売ります」「買います」と双方が合意すれば、それだけで売買契約は有効なのです。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。


2. 証拠が残らない

口頭やSNSでのやりとりは、後から「言った・言わない」の争いになります。
裁判では「誰が何を約束したのか」を証明できる資料がなければ、主張が通らないことが多いのです。

契約書があれば、

  • 契約内容
  • 契約日
  • 当事者の署名・押印

が明確になり、法的証拠として強い効力を持ちます。
つまり、契約書は「合意を見える化した証拠」です。


3. トラブル時に不利になりやすい

契約書がないと、トラブルが起きた際に“どちらが正しいか”を第三者が判断しづらくなります。

たとえば…

  • 支払期限をめぐる争い
  • 仕事内容の範囲をめぐる認識のズレ
  • キャンセルや解約の条件

これらはすべて「契約書に何と書いてあるか」で解決できる問題です。
契約書がないと、相手の主張に押し切られてしまうことも少なくありません。


4. 信頼関係が崩れやすい

「契約書を作らない=形式にこだわらない」という柔軟さが時に信頼につながることもあります。
しかしビジネスの現場では、曖昧さはトラブルの温床です。

契約書を交わすことは、相手を疑う行為ではなく、
「お互いの信頼を守るための確認作業」にほかなりません。


5. 契約書を交わす“タイミング”が大事

取引が進んでから作成しようとすると、条件変更が難しくなったり、相手が応じなくなったりします。
契約書は、合意の直前か、取引開始前に交わすのが原則です。


まとめ

契約書がなくても契約は成立します。
しかし、トラブルを防ぎ、信頼関係を守るためには、書面で残すことが最善の防衛策です。

契約書は、取引の安心と信用を形にするツールです。
「うちは小さな取引だから大丈夫」ではなく、「小さな取引こそ書面に残す」。
それが、トラブルのないビジネスの第一歩です。

南本町行政書士事務所 特定行政書士 西本

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