◆ 遺言の内容、実は“無効”になることも…
遺言書を作って安心していませんか?
でも実は、「遺言に書かれた相手が先に亡くなっていた」というだけで、その部分が無効になるケースがあります。
たとえばこんなケース:
父の遺言書:「長男Aにこの家を相続させる」
しかし父よりも先に長男Aが亡くなっていた。
この場合、その家はどうなるのでしょうか?
実は、「自動的に次男や孫に相続される」とは限らないのです。
この記事では、
- 遺言書で指定した人が先に亡くなっていた場合の法律上の取扱い
- 問題が起きる理由
- そのリスクを防ぐ方法(代替受遺者の指定など)
を法律の根拠を交えて解説します。
1. 遺言の受遺者が先に死亡していたらどうなる?
結論から言うと、その部分の遺言は効力を失います(無効)。
たとえば、
「自宅は妻に遺贈する」と書いたが、遺言者が亡くなる前に妻が死亡した。
この場合、自宅は遺言の効力がなくなり、法定相続人で分けることになるのです。
2. 法律上のルールと民法の規定
遺言の効力については、民法第994条が関係します。
民法第994条(受遺者の死亡等)
遺言によって財産を与えられた者(受遺者)が、遺言者の死亡以前に死亡したとき、その遺言による贈与は効力を生じない。
つまり、遺言の内容は「遺言者が死亡したときに生きている人」にしか効力を持たないのです。
3. 自動的に代わりの人が受け取れるのか?
多くの方が誤解していますが、代わりに家族が自動で引き継げるわけではありません。
例:
- 「妻に全財産を遺す」と書いたが、妻が先に死亡していた。
- → 自動的に子どもに遺されるのではなく、**遺言がなかった場合と同じ状態(法定相続)**になります。
特に注意!
- 内縁の配偶者(法律婚でない)など、法定相続人でない人に遺贈していた場合
→ その人が先に亡くなると、その財産は誰にも渡らず、国庫に帰属する恐れも。
4. 問題の回避策①:代替受遺者を指定する
こうしたトラブルを避けるために有効なのが、代替受遺者の指定です。
例:「長男に家を遺贈する。もし長男が先に死亡していた場合は、その子に相続させる。」
このように第二候補(代替)を明記することで、遺言の効力を維持することができます。
5. 問題の回避策②:予備的遺言を活用する
さらに高度な対策が「予備的遺言(よびてきゆいごん)」です。
これは、「第一の遺言が無効になった場合に備えて、別の内容もあらかじめ書いておく」方法です。
例:「全財産を妻に相続させる。妻が先に死亡している場合には、長女に相続させる。」
このように、“もしも”のパターンを想定しておくことで、遺言が無効になるリスクを大きく減らせます。
6. まとめ:遺言の「想定外」を防ぐのが本当の相続対策
遺言は一度作ったら終わりではありません。
年月が経つにつれて、家族の状況も健康状態も変化していきます。
だからこそ、以下の点に注意が必要です:
✅ 遺言の受遺者が先に死亡する可能性を考える
✅ 代替受遺者や予備的遺言を活用する
✅ 定期的に内容を見直す(3〜5年に1回がおすすめ)
✅ 法律の専門家(司法書士・弁護士)と相談する
遺言書の作成に関しては、遺言書作成サポートページをご覧ください。
大野