個人事業主、会社を起業しビジネスを展開していると契約書に触れる機会が多くなります。
経営者の方が押さえておくべきポイントを解説します。
契約の仕方
契約とは、2人以上の当事者が合意をすることによって、法的な効果(権利義務)が発生する行為です。
その契約は、当事者の意思表示が合致したときに成立します(民法522条第1項)。
そんな契約ですが、契約を結ぶ方法は3つあります。
- 口頭での契約をする場合(口約束)
- 書面での契約をする場合(紙媒体の契約書などを利用する)
- 電子契約をする場合(PDFなどの電子文書を利用する)
契約書とは
口約束でも契約は成立します。
しかし、言った言わないというトラブルが発生した際、口約束では契約の成立を証明が困難です。
これを防ぎつつ、裁判となった場合にも立証が容易になるように契約書を作成します。
そのため、契約書とは、以下のように言えます。
「当事者の意思の合致で成立した契約であることを証明する目的で作成される文書」
契約書の基本的構成
契約当事者の意思の合致で成立した契約であることを証明する目的で作成される文書が契約書ですから、きちんとした物を作成したいと思います。
でも、法律に詳しいわけではないのでどのように作ればいいのだろうと思う方がいるかもしれません。
そんな方のために、契約書の基本的な構成をご紹介します。
契約書を作成する目的から構成で1番重要なのは「見やすさ」です。
ここを外しさえしなければ、自由に構成してもよいです。
が、一般的には以下のようになります。
- タイトル(売買契約書、委任契約書、請負契約書等どんな契約なのかのタイトル)
- 前文(誰と誰の意思の合致があって契約書を作ったのかの説明)
- 本文(具体的な条項→どんな条項を設けるかは次章で説明します)
- 後文(作成した契約書の付記事項を書きます)
- 日付、署名捺印(記名押印)欄
もう少し詳しく
構成については基本的に上記のような感じにします。
それぞれの項目についてもう少し解説します
- タイトル
これはタイトルを見ただけでどのような契約をしたのか、という大まかなことがわかるようにしておくことが大切です。
売買契約を締結したのか、委任契約を締結したのか、請負契約を締結したのか、一目でわかることができれば、内容を把握しやすくなります。 - 前文
契約の要旨(全体像)がわかるようにしましょう。
・契約の当事者は誰なのか
・その当事者の定義(甲、乙などと定義します)
・どんな契約を締結したのか - 本文
次章で説明します。 - 後文
以下のような付記事項を記載します
・契約が成立したことの確認
・契約書の作成数
・契約当事者が保有する枚数
・保有するものが原本なのか写しなのか
・署名捺印、記名押印をすること
契約書の基本的条項
契約書の基本的な構成が整ったら、次は本文の内容を考えていきましょう。
本文には、契約の条項を記載していきます(権利と義務について記載します)。
当事者の意思の合致がここで記載されますから、大切なのは「明確であること」「わかりやすいこと」です。
また、契約が無効にならないように法律に基づいて作成することも重要です。
法律に詳しくない方は、一般的に以下の条項を設けることが多いです。参考にしてください。
- 契約期間
- 費用の支払い方法
- 自社の権利、義務
- 相手方の権利、義務
- 損害賠償
- 解除事由
- 反社会的勢力の廃除
- 権利義務の譲渡の禁止
- 協議条項
- 合意管轄
もう少し詳しく
設ける条項は基本的に上記のようになります。
それぞれの条項について、もう少し詳しく解説します。
- 契約期間
契約が何時から何時までなのか、更新はどうするのかを記載します。 - 費用(報酬)の支払い方法
誰が誰に、いつまでに、どこに支払うのか、手数料が発生する場合にはどちらが負担するのか、を記載します。 - 自社の権利、義務
どんなことを相手方に履行してもらうのか(業務内容など)などを記載します。 - 相手方の権利、義務
相手方はどんなことをしてはならないのか(秘密の漏洩、再委託など)
報告義務を課すなどを記載します。 - 損害賠償
どんなことが発生した場合で、どんな損害を被った場合に、どこまで損害を賠償するのかについて記載します。 - 解除事由
どんなことが発生したら、契約を解除できるのかについて記載します。 - 反社条項
反社会的勢力に該当しないこと確認する条項です。 - 権利義務の譲渡の禁止
発生した権利や義務について、相手方の承諾なく勝手に譲渡できないようにする旨を記載します。 - 協議条項
契約書に記載がないことが発生した場合には、話し合いで解決するよう努めましょう、ということを記載します。 - 合意管轄
万が一争いとなった場合、どこの裁判所で裁判を行うかについて記載をします。
契約書の書き方
基本的な構成、基本的な条項についてみてきましたが、専門家でない限り初めからきれいに文書化できる方は少ないです。
ひな形を利用するという方法もありますが、自分で作成したい方は以下のことに注意しながら、箇条書きで書いてみてください。
- 契約当事者は誰と誰なのか
- どんな契約を締結したのか
- 契約期間はどうするのか
- 契約当事者の権利と義務は何か(何をして、何をしてもらうのか)
- その費用
これを箇条書きでもいいので、自由に書いたうえで、契約書の具体的な条項に落とし込んでいくと書きやすくなるかと思います。
作成時のポイント
契約書を作成するポイントは契約書を作成する目的から一目瞭然化と思いますが、改めてまとめておきます。
まず、契約書を作成する目的は・・・
「当事者の意思の合致で成立した契約であることを証明する目的」
契約を締結する際、2人以上の登場人物が存在します。
複数人が登場しますから、それぞれ理解に幅が生じてしまいます。
また、それぞれが思惑をもって契約を締結します。
すなわち、当事者間に齟齬が生じやすくなります。
契約書には齟齬が生じないようにしなければなりません。
そのため、契約書を作成するポイントは
- 見やすいこと
- 内容が明確であること
- わかりやすいこと
- 法律に反していないこと
このポイントを押さえておかなければ、後にトラブルが発生しやすくなります。
不安が残る場合には、専門家に精査をしてもらいましょう。
契約書でお困りの方
当事務所は企業法務・民事法務に力を入れています。
これまで数百種類の契約書を作成、契約書の精査をしてまいりました。
契約書の作成にお困りの方や作成した契約書に不安な箇所がある方はぜひ当事務所までご相談ください。
また、法務確認のセカンド精査も行っておりますので、第三者視点での意見をお求めの際もご相談ください。