民事訴訟法の重要な概念に処分権主義というのがあります。処分権主義とは、当事者に訴訟の開始、審判対象の特定やその範囲の限定、さらに判決によらずに訴訟を終了させる機能を認める建前をいいます(民事訴訟法246条)。

要は民事訴訟とは、裁判ではありますが、刑事事件と違って、犯罪の認定を行う訳ではなく、当事者の権利の主張の場なんですね。ということは、例えば、お金を貸したが返してくれないから訴えるといった場合でも、途中でもういいやということはある訳です。その場合であってもいったん裁判したんだから、最後までやれとか、真実を突き止めるべきだということは妥当しません。そこで当事者がもういいやという場合には自由にやめてもいいという形をとっているんですね。

この処分権主義が民事訴訟に認められるのは、訴訟の対象となる私法上の権利、法律関係については実体法上、私的自治の原則が妥当し、当事者の自由な意思による処分が認められているので、民事訴訟の本案における権利、法律関係をめぐる紛争解決も当事者の意思による処分に委ねるべきであることに基づいているというのがその理由です。

行政書士 西本