競業避止義務は会社法上規定のあることです。従って現会社の業務と被る行為はやってはいけないことになっています。例えば会社法356条1項1号「会社の事業の部類に属する行為」とは、会社の事業の目的たる取引より広く、それと同種又は類似の商品、役務を対象とする取引であって、会社の行う事業と市場において競合し、会社と取締役との間に利益の衝突をきたす可能性のある取引をさすと考えられています。
例えば、同業他社の代表取締役に、役員在任中に就任することはまさにこれに当たると考えられます。
退職後には取り決めで競業避止義務を負うこと明記した書面を交わしていないのであれば原則負うことはありません。しかし、それでも元いた会社の業績を意図的に下げるような行為は信義則違反(民法1条2項)にはなる可能性もあるし、不法行為(民法709条)も成立の余地があるでしょう。他方、会社の方でこれを縛りすぎるとやはり独禁法2条9項5号優越的地位の濫用、または同法19条不公正取引の禁止に当たる可能性もあるため、個別具体的に判断することにはなります。
西本