現行の民法(2020年3月31日まで)であれば、債務者から受益者、受益者から転得者が出た場合には、受益者が当該弁済行為が、債権者を害することを知りてその弁済を受けたこと(害する意思つまり悪意)でない(善意)場合、転得者が悪意であればその転得者には詐害行為取消権を行使できるとしていた。
しかし、改正民法ではここが異なる。つまり、受益者が善意であれば後の転得者が悪意であっても、転得者に詐害行為取消権を行使できないルールとなった。
この点は、現行民法の反省がある。現行で行くと上記事例では詐害行為取消権が行使できるとしていた。仮に債権者が詐害行為取消権を行使した場合受益者、転得者間の取引は取り消される。
しかし、それはあくまで債権者との間の問題であるから(相対的効力)、転得者は受益者と取引をしたにも関わらず、その取引はなかったものとされたのである。
これを理由に今度は転得者は受益者に対し、債務不履行による、損害賠償請求を行使しうるだろう。
受益者は善意であるから、これはとんだとばっちりということになろう。
そこで、改正後は、債権者が転得者にかかっていくためには受益者、転得者双方悪意であることを要件とした(新424条の5本文及び第1項2項)。
これは判例のルールではないが、こうすることで、悪意の受益者に転得者が債務不履行による損害賠償請求を行使しても、知っていた以上何ら不公平ではないということになる。
西本