これは旧法ではない条文です。AがBに対して債権を有している場合に協議に入ることがあります。この時時効完成が迫っていた場合には時効完成が猶予されるという条文です。

当事者が、書面によって権利行使について協議を行う旨の合意を書面で行った場合には、新たに時効中断措置(時効更新措置)を取らなくてもよくなる。その取らなくてもよい期間は、①合意があった時から1年、②当該合意の中で定めた協議期間内(期間が1年未満)③書面による協議続行拒絶通知の時から6か月経過時のいずれか早い期間である。③については協議がうまくいかなくても、時効がいったん停止するという理解でよいです(新151条1項1号から3号)。

ここでの注意は時効の完成の猶予であり、いわゆる中断で振出しに戻るわけではないということです。

また、協議による合意は再度行うことも出来ます(新151条2項)。つまり時効完成が近い状況で、両者で協議して、何時払うとか決めたとします。その段階で時効完成が猶予されます。その間にさらに、もう一回やはり納得いかないと言って協議した場合にも、151条1項1号から3号の猶予は生じます。生じますが、協議ととかしなかったとしたら時効が完成していた日から5年を超えることは出来ないということになりました。

例えば、債権の消滅時効は10年ですのでこれを前提に債権発生から9年10か月の時に協議したとします。この時両者の間で特に独自の時効期間は設けなかったとします。するとこの合意の日から1年は時効完成が猶予されます。すると最長でここから1年ですので10年10か月は時効が完成しません。さてこの10年と8か月目にやはりもう一度協議となったとします。この時、また1年猶予されます。この段階で11年8か月は猶予されることになりますが、本来時効が完成すべき時は、債権発生から10年目ですので1年8か月延びたわけです。これは5年を超えていませんからここまでは時効が完成しないということです。

西本