契約の解除については従来の旧法化では債務不履行と要件がかぶっていた。筆者もこれに慣れ親しんでいるものの一人である。
しかし、新法下では債務不履行と言う概念そのものを少し変えて考える必要がある。
債務不履行による損害賠償請求は債務者に帰責性(故意、過失により債務の履行が出来なかったこと)が必要となる。
他方、債務不履行による解除については債務者の帰責性は要件にない。
債務が履行されなかったことを債務不履行といい、これが債務者のせいだろうが不可抗力だろうが関係ないということである。
債務不履行と言う言葉自体に、債務者の帰責性を条件反射的にとらえている読者については、考えを以下のように広くとらえてほしい。
まず頭の中で大きな円を描く。その円は債務不履行である。次にその円の中に帰責性あり、なしの二つの円を描く。そのそれぞれに損害賠償請求、解除と入れる。
概念をこのように理解しておくと迷うことはない。
話しを戻すと、新法の解除に関する規定は履行遅滞、定期行為、履行不能という区別でなく、「催告による解除」(新541条)、「無催告解除」(新542条)、「債権者に帰責事由がある場合にはそのどちらも債権者から解除できない」(新543条)、と規定している。現に新民法541条には履行遅滞と言う文言はない。しかし、内容としては履行がなされなかった時はとあるので、基本的に履行遅滞を指す。この時、催告し、履行がなされない場合には債権者は解除できる。
次に新542条で催告によらない解除と題していくつか列挙している。この中に履行不能が規定している。
すなわち、履行不能のようなケースでないなら催告解除、そうでないなら無催告解除が出来るということになる。
前述した通り、この解除には債務者の帰責性は不要となる。別途損害賠償を請求したいなら債務者の帰責性が必要となる。もっとも、要件事実としてはこの帰責性のなかったことという要件は債務者側が立証することになる(法律要件分類説)。
西本