遺言書を作成したあとに、「やっぱり内容を変えたい」「財産の配分を見直したい」と思うことは珍しくありません。
人間関係や財産状況は時間とともに変化します。
では、一度作成した遺言書を変更するにはどうすればよいのでしょうか?
この記事では、遺言書の変更方法や注意点を、わかりやすく解説します。
1.遺言書は「何度でも」書き直せる
遺言書は、本人の意思を示す最終的な意思表示ですが、生前であれば何度でも書き直すことが可能です。
法律上も、「後に作成した遺言が、前の遺言に優先する」と定められています(民法1023条)。
ポイント
- 新しい遺言書を作れば、古い遺言のうち矛盾する部分は自動的に無効になります。
- したがって、「気が変わった」「事情が変わった」場合は、ためらわずに新しい遺言書を作り直せます。
2.遺言の変更方法は「作り直し」または「一部変更」
遺言書を変更するには、主に次の2つの方法があります。
① 新しい遺言書を作成する(全面書き換え)
もっとも確実な方法が、新たに遺言書を作り直すことです。
日付を新しくして、以前の遺言よりも後の日付で作成すれば、それが有効になります。
メリット
- 古い遺言との整合性を気にせず書ける
- 書き直し漏れによる混乱を防げる
デメリット
- 全文を書き直す手間がかかる
② 一部変更(付け加え・削除)
すべてを作り直すほどではない場合には、**「変更遺言書」**を作成することも可能です。
たとえば、「長男への遺贈額を変更する」「遺言執行者を変更する」といった場合です。
この場合も、変更部分を明確に記載し、日付と署名押印を忘れずに行います。
例:「令和7年10月23日付の遺言書中、第2項を次のとおり変更する。」
3.遺言書の種類ごとの変更方法
遺言書には大きく分けて3種類あります。
それぞれの変更方法には特徴があります。
| 遺言の種類 | 変更の方法 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自筆証書遺言 | 新しい遺言書を自筆で作成(または一部変更) | 保管場所に注意。法務局保管制度を利用する場合、再保管が必要。 |
| 公正証書遺言 | 公証役場で新たに作り直す | 公証人に再度依頼し、手数料が発生。確実で安全。 |
| 秘密証書遺言 | 新しい遺言を再度封印して作成 | 実務上あまり用いられない。 |
4.変更時の注意点
遺言の変更は、正しい手順を踏まないと無効になるおそれがあります。
以下の点には特に注意しましょう。
✅ 日付と署名押印を忘れずに
自筆証書遺言の場合、日付・署名・押印が欠けていると無効になります。
✅ 古い遺言を破棄しない
新しい遺言が有効と認められるまで、古い遺言も保管しておくのが安全です。
(新しい遺言に不備があると、古い遺言が生きる場合があります)
✅ 保管制度の再申請が必要
法務局の「自筆証書遺言保管制度」を利用している場合、
変更後の遺言を再度保管申請しなければなりません。
以前の遺言は自動で破棄されない点にも注意が必要です。
5.行政書士・専門家への相談がおすすめ
遺言の変更は、形式を一つ間違えるだけで無効になることがあります。
特に、複数回変更している場合は内容が複雑になりやすく、専門家の確認を受けておくと安心です。
南本町行政書士事務所では、
- 遺言書の見直し・変更サポート
- 公正証書遺言の作成支援
などを行っています。
「前に書いた遺言を修正したい」「この内容で大丈夫か確認したい」といったご相談もお気軽にどうぞ。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 遺言は何度でも変更可能 | 後の日付の遺言が有効 |
| 方法 | 全面作り直し or 一部変更 |
| 種類別 | 公正証書は公証人再手続、自筆証書は再保管が必要 |
| 注意点 | 日付・署名押印を忘れず、古い遺言をすぐ破棄しない |
| 専門家相談 | 無効リスクを避けるためにおすすめ |
遺言は「今の気持ち」を反映できる大切な手段です。
人生の変化に合わせて、定期的に見直しておくことが、将来のトラブル防止にもつながります。
大野