SNSや動画配信などで発信した内容が拡散され、予期せぬ批判や誹謗中傷が集まる「炎上」。個人や企業にとって大きなストレスになりますが、法律上できること・できないことを理解して適切に対処することが重要です。
目次
1. 炎上で法的にできること
(1) 名誉毀損・信用毀損の主張
- 他者が事実と異なる内容を投稿して名誉を傷つけた場合、損害賠償請求や削除請求が可能です。
- 裁判例:2020年、SNS上で個人を誹謗中傷した投稿者に対し、損害賠償300万円と投稿削除が認められた事例があります。
(2) 発信者情報開示請求
- 匿名投稿者でも、裁判所を通してIPアドレスや契約情報の開示を請求可能です。
- 開示により加害者を特定して、損害賠償や謝罪を求めることができます。
(3) 警察への相談
- 脅迫・ストーカー行為など犯罪行為が絡む場合、刑事告訴や被害届の提出が可能です。
- 具体例:「殺す」「家に行く」といった脅迫発言がSNSで行われた場合、警察が介入するケースがあります。
(4) プラットフォームへの通報
- Twitter、YouTube、Instagramなどには、規約違反の報告窓口があります。
- 名誉毀損や嫌がらせが確認されれば、アカウント停止や投稿削除が行われます。
2. 法的にできないこと・注意点
(1) 過剰な報復行為
- 炎上した相手に個人的に嫌がらせをすることは逆に犯罪になります。
(2) 投稿の内容をすべて削除できるわけではない
- 投稿者の表現の自由も尊重され、削除には裁判手続きが必要な場合があります。
(3) 批判と名誉毀損の境界
- 批判や意見は表現の自由として保護されるため、すべてが名誉毀損になるわけではありません。
3. 炎上事例から学ぶ
事例1:企業の公式Twitter炎上
- 企業の不適切ツイートによりユーザーが大量リツイート・批判
- 法的対応:弁護士を通じて名誉毀損に該当する投稿のみ削除依頼、被害拡大を防止
事例2:個人YouTuberへの誹謗中傷
- 匿名コメントで人格を否定する発言
- 法的対応:投稿者特定のため発信者情報開示請求→謝罪と損害賠償が成立
4. 企業向け炎上対応フロー
- 初期対応
- 炎上内容を把握し、拡散状況を記録
- スクリーンショット・URL・投稿日時を保存
- 内部確認
- 法務担当・広報担当と状況を共有
- 発信者の特定が必要か検討
- プラットフォーム対応
- 削除依頼やアカウント停止を通報
- 法的手段の検討
- 名誉毀損・信用毀損の可能性がある場合、弁護士に相談
- 発信者情報開示請求や損害賠償請求を検討
- 広報対応
- 公開コメントや謝罪文の内容を慎重に検討
- 感情的対応を避け、事実に基づく説明を行う
5. まとめ
- 炎上に対して法的にできることは、「削除請求」「発信者情報開示」「損害賠償請求」「刑事告訴」など
- できないことは、「感情的な報復」「すぐに全削除できると思うこと」「批判全般を名誉毀損扱いすること」
- 炎上対応では証拠保存・専門家相談・冷静な対応が最も重要
- 企業はフロー化して対応するとリスクを最小化できる
大野