原状回復とは?―条文と具体例でわかりやすく解説

賃貸物件を退去するときによく耳にする「原状回復(げんじょうかいふく)」。
「借りる前の状態に戻すこと?」となんとなくイメージされがちですが、実は法律や裁判例で考え方が整理されている重要なルールです。

今回は、条文の根拠具体例を交えながら、原状回復の意味をわかりやすく解説します。

目次

原状回復の条文的根拠

原状回復の考え方は、主に 民法 に規定されています。

  • 民法621条(賃貸借における原状回復義務)

賃借人は、賃貸借が終了したときは、賃借物を原状に復して賃貸人に返還しなければならない。

つまり、借りた人(賃借人)は、契約が終わったときに物件を元の状態に戻して返す義務がある、とされています。

ただし「原状」とは「借りた当初と全く同じ状態」という意味ではありません。
経年劣化や通常の使用による消耗は、原状回復の対象外とされています。

この考え方は、国土交通省の 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(いわゆる「原状回復ガイドライン」)でも整理され、トラブル防止の基準となっています。

原状回復の内容とは?

では、具体的にどんな修繕や負担が「原状回復」にあたるのでしょうか?
ポイントは 「通常損耗」か「借主の過失による損耗」か です。

✅ 原状回復の対象外(借主が負担しなくてよいもの)

  • 家具を置いていた部分の床のへこみ
  • 冷蔵庫の後ろの電気焼け跡
  • 日光による畳や壁紙の日焼け
  • 通常の生活による壁紙の汚れ

👉 これらは「通常の使用による損耗・経年劣化」とされ、貸主の負担になります。

✅ 原状回復の対象となる(借主が負担するもの)

  • タバコのヤニによる壁の変色
  • ペットを飼って禁止事項を破り、床や壁に傷や臭いがついた場合
  • 釘やネジで大きな穴を開けたまま退去する場合
  • ワインやコーヒーをこぼして畳や床を汚した場合

👉 これは「借主の過失や故意による損耗」とされ、借主が修繕費を負担するケースです。

具体例で理解する原状回復

例1:カーペットの汚れ

  • 普通に歩いたり家具を置いたことでできたへこみ → 原状回復義務なし
  • コーヒーをこぼしてシミになった → 借主が修繕費を負担

例2:壁紙の変色

  • 太陽光による色あせ → 原状回復義務なし
  • タバコのヤニで一部が黄色くなった → 借主の負担

例3:ペットの飼育

  • 契約で禁止されているのにペットを飼い、壁や床を傷つけた → 借主の負担
  • 契約でペット可の場合でも、通常を超える損耗(大量のひっかき傷など)があれば負担する場合あり

まとめ

原状回復とは、民法621条に基づき、賃借人が契約終了時に「物件を元の状態に戻す」義務のことです。
ただし、元の状態とは「借りたときと全く同じ」という意味ではなく、通常の使用による劣化は含まれないというのが重要なポイントです。

  • 経年劣化や通常損耗 → 貸主負担
  • 借主の過失・故意による損耗 → 借主負担

トラブルを避けるためには、入居時と退去時の写真を撮っておくこと、契約書や管理会社の説明をしっかり確認することが大切です。

大野

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