「取引先の社長が突然亡くなった」「お客様が契約途中で他界した」
ビジネスや日常の中で、こうした場面に直面することは少なくありません。
では、亡くなった方との契約は、どうなるのでしょうか?
契約は“死亡”で消えるわけではない
結論から言えば、人が亡くなっても契約が自動的に消えるわけではありません。
多くの場合、相続人に引き継がれるのが原則です。
たとえば、賃貸借契約・売買契約・金銭消費貸借契約(借金)などは、原則として相続の対象になります。
つまり、亡くなった方の財産だけでなく、契約上の権利や義務も、配偶者や子どもなどの相続人が引き継ぐことになるのです。
すべての契約が相続されるわけではない
ただし、例外もあります。
法律では、「一身専属的な契約」は相続されないと定められています。
これは「その人だからこそ成立する契約」を指し、以下のようなものが該当します:
雇用契約(労働者としての立場は死亡で終了)
委任契約(顧問契約、士業契約など)
歌手やアーティストの出演契約
こうした契約は、本人の死亡により自動的に終了し、相続はされません。
「相続人がいない場合」はどうなる?
もし相続人がいない場合、財産や契約関係は国庫に帰属する可能性があります。
ただ、相続人がいないからといって勝手に契約を終了したり、財産を処分したりするのは危険です。
このようなケースでは、家庭裁判所が選任する「相続財産管理人」が財産整理や契約処理を行います。
安易な自己判断は避け、法律の専門家に相談することが重要です。
契約トラブルを防ぐための工夫
「相続人に迷惑をかけたくない」「契約がどうなるか不安」という方は、事前に以下の対策を考えておくと安心です。
契約書に「死亡時の処理条項」を入れる(例:死亡時に契約終了)
遺言書で契約関連の意向を明記する
信頼できる家族や専門家に契約内容を共有しておく
特に個人事業主やフリーランスの方は、業務委託契約や売掛金の処理で相続人に負担がかかるケースが多いため、早めの備えが有効です。
まとめ──「死後の契約」は決して他人事ではない
契約は「人が亡くなれば終わり」と思われがちですが、実際には相続を通じて続くことが多いのが現実です。
相続トラブルや取引先との混乱を防ぐためにも、生前から契約内容の整理と共有をしておくことが、何よりのリスク管理と言えるでしょう。
「いざ」というときに慌てないためにも、自分と家族を守るための契約の整理、今日から少しずつ始めてみませんか?
南本町行政書士事務所 特定行政書士 西本