借地借家法についてもうマスターしている人もいるかもしれませんが、もう少しだけお付き合いください。
本日は建物買取請求権と造作物買取請求権です。
①建物買取請求権(法第13条、第14条)
借地権の存続期間が満了する際に建物があった場合、借地人としては更新してほしいものです。
借地借家法においても建物があった場合において請求更新や使用継続更新の規定を設けています。
しかし、貸主が嫌だといえば更新はされないことになります(正当事由に基づいて遅滞なく異議を述べた場合)。
更新がされなければ土地が使えないことになりますから、土地の上にある建物はどうしたらよいのでしょうか?壊さなくてはならないのでしょうか?
この問題を解決するために借地借家法には「建物買取請求権」という規定を設けています。
借地権の存続期間が満了し、契約の更新がないときは、土地の貸主に対して「建物を時価で買い取れ」といえることになります(たとえ土地の貸主に無断で再築した建物であってもです 法第13条第1項)。
土地の貸主はこの請求を拒否することは認められていませんので、建物の売買契約が成立することになります。
もっとも、借主の債務不履行が原因で借地契約が解除された場合には、この権利を行使することはできません。
また、建物買取請求権は、借地権者から借地権の設定を受けた人(転借地権者)も借地権設定者と借地権者の存続期間が終了する際に、転借地権者から借地権設定者に対して直接、行使することができます(法第13条第3項)
さらに、借地権者が建てた建物を買った人(第三者)で、借地権設定者が借地権の譲渡・転貸を承諾しない場合には、第三者から借地権設定者に対して直接、行使することができます(法第14条)
②造作買取請求権(法第33条)
借地権者が建物を借地権設定者に強制的に買わせることができるのと同様に、建物賃借権においても似たような権利が設けられています。
賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物賃借人は期間満了又は賃貸借の終了するときに、賃貸人に対して時価で買取ことを請求することができます(法第33条第1項)。
対象は賃貸人の同意を得て建物に付加した造作です。
この規定は建物の転借人も行使することができます(法第33条第2項)。
違いとしては、建物買取請求権は特約で排除することはできませんが、造作買取請求権は特約で排除することが許されています。
それはなぜか?
これを特約で排除できないとした場合(絶対に造作買取請求権を行使できる)、後に造作を買い取らなくてはならないことになるため、賃貸人は造作をすることを同意しなくなります。結果として賃借人が不便になるためです。
また、建物買取請求権は土地の貸主がお金を払ってくれなければ、土地の明け渡しを拒否できるのですが、造作買取請求権は同様の場合、土地の明け渡しを拒否することはできません。
③第三者に譲渡・転貸しようとする際の裁判所の関わり(借地と借家の違い)
賃借人が賃借権を第三者に譲渡・転貸しようとしたが、賃貸人が承諾してくれない場合において、
A)借地の場合
賃貸人の承諾に代わる許可を裁判所からもらうことができる
B)借家の場合
賃貸人の承諾に代わる許可を裁判所からもらうことができない
〇建物賃貸借の場合、誰が使うか(荒く使う人なのか否か等)は貸すか貸さないの重要な要素になりますので、借地のように裁判所が代わりに許可をしてくれるという制度は設けられていません。
大野