総選挙と通常選挙――なぜ衆議院は「総選挙」、参議院は「通常選挙」と呼ばれるのか
ニュースや新聞を見ていると、
- 「衆議院総選挙」
- 「参議院通常選挙」
という言い方が使い分けられていることに気づきます。
どちらも国会議員を選ぶ選挙であるにもかかわらず、なぜ呼び方が違うのでしょうか。
この違いは、単なる慣習ではなく、憲法と選挙制度の構造の違いから生じています。
「総選挙」とは何を意味しているのか
まず「総選挙」という言葉の意味から整理します。
「総選挙」とは、その議院の議員を原則として全員選び直す選挙を意味します。
日本でこの言葉が使われるのは、衆議院議員の選挙だけです。
衆議院の任期は憲法で4年と定められていますが(憲法45条)、
それ(任期満了)以前に解散が行われることがあります。
解散があると、衆議院議員は一斉に全員失職し、
その全議席について一度に選挙を行います。
この「一度に全部の議席を選び直す選挙」こそが、衆議院総選挙です。
つまり、
- 解散によって議員全員がいなくなる
- 全議席を対象に一斉に選ぶ
この性質から「総選挙」と呼ばれているのです。
衆議院だけに「解散」があるという制度的特徴
ここが最も重要なポイントです。
日本国憲法では、
- 衆議院:解散制度あり(憲法7条・69条)
- 参議院:解散制度なし
と明確に分けられています。
衆議院は、
- 内閣不信任決議
- 首相の判断
などによって、任期途中でも解散されることがあります。
その結果、不定期に、全議席を一斉に選び直す選挙が発生します。
これが「総選挙」です。
一方、参議院には解散がありません。
任期6年で、3年ごとに半数ずつ改選される「半数改選制」が採られています。
「通常選挙」とは何か――参議院選挙の性質
参議院選挙が「通常選挙」と呼ばれる理由は、その実施の仕方にあります。
参議院議員は、
- 任期:6年
- 3年ごとに半数ずつ改選
という制度です。
したがって、参議院選挙は原則として、
法律で予定された時期に、定期的に行われる選挙です。
このように、
- 解散による突発的な選挙ではなく
- 制度上あらかじめ予定されている選挙
であることから、「通常選挙」と呼ばれています。
ここでいう「通常」とは、
「特別な事情によらず、制度どおりに行われる選挙」
という意味です。
用語の違いは法律用語としても区別されている
この呼び方の違いは、報道用語ではなく、公職選挙法上の用語としても明確に区別されています。
- 衆議院議員の選挙:
→ 衆議院議員総選挙 - 参議院議員の選挙(定期改選):
→ 参議院議員通常選挙
と法律上でも使い分けられています。
さらに、参議院には
- 欠員補充のための「補欠選挙」
もありますが、これと区別する意味でも「通常選挙」という名称が使われています。
まとめ――呼び方の違いは「解散」と「任期制度」の違いから生まれる
最後に整理しておきましょう。
| 項目 | 衆議院 | 参議院 |
|---|---|---|
| 任期 | 4年(解散あり) | 6年(解散なし) |
| 選挙の性質 | 全議席を一斉に選び直す | 半数ずつ定期改選 |
| 呼び方 | 総選挙 | 通常選挙 |
衆議院が「総選挙」と呼ばれるのは、
解散により、議員全員を一度に選び直す制度だから。
参議院が「通常選挙」と呼ばれるのは、
制度どおり定期的に行われる、通常の改選だから。
この違いは、日本の二院制の役割分担――
- 衆議院:政治の動きを直接反映する「解散のある院」
- 参議院:政局から距離を置く「安定の院」
という設計思想そのものを反映しているとも言えます。
大野