AIによる楽曲のアレンジは著作権との関係で認められるか?

AIが音楽を作り、アレンジし、販売までできる時代になりました。

「AIに曲をアレンジさせたなら、自分は著作権侵害にならないのでは?」

そんな疑問を持つ方も多いでしょう。

結論から言えば、既存の楽曲をAIでアレンジする行為は、原則として著作権上の制限を受けます。

AIだからといって、自由に使えるわけではありません。

この記事では、

AIによる楽曲アレンジと著作権の関係を、法律の視点から整理します。

AIが作った音楽に著作権はあるのか

まず前提としてよく言われるのが、

「AIが作った音楽には著作権がない」

という話です。

日本の著作権法では、著作物とは「人の思想又は感情を創作的に表現したもの」とされています。

そのため、AIが自律的に生成しただけの音楽には、原則として著作権は発生しないと考えられています。

ここまでは、概ね正しい理解です。

しかし、問題はそこから先にあります。

既存の楽曲をAIでアレンジした場合はどうなるのか

すでに存在する楽曲(作詞・作曲された原曲)をもとに、

メロディを変える

リズムや構成を変える

雰囲気を残したまま作り直す

こうした行為をAIにさせた場合、法律上はどう評価されるでしょうか。

この場合、問題となるのが**「翻案権」**です。

AIアレンジは「翻案」にあたるのか

著作権法では、原曲を基にして形を変えた作品を作る行為を翻案と呼びます(著作権法27条)。

重要なのは、

翻案かどうかは「AIがやったか」「人がやったか」では決まらないという点です。

AIは法律上の主体ではありません。

あくまで人が使う道具です。

つまり、

原曲をAIに入力し

アレンジを指示し

生成結果を利用する

この一連の行為は、人が翻案したものとして評価されます。

原曲との同一性が認識できる場合、

AIによるアレンジであっても、翻案に該当する可能性は高いといえます。

二次的著作物でも自由に使えるわけではない

「アレンジした曲は二次的著作物だから、自分のものでは?」

と思われる方もいますが、ここにも注意が必要です。

確かに、翻案によって生まれた楽曲は二次的著作物にあたります。

しかし、著作権法28条により、

二次的著作物を利用する場合にも、原著作物の著作権は及ぶ

とされています。

つまり、

原著作者の許諾なしに

AIアレンジ楽曲を販売・配信することは

著作権侵害となる可能性が高いのです。

「AIが作ったから責任はない」は通用しない

よくある誤解が、

「AIが自動生成したのだから、責任はない」

という考え方です。

しかし法的には、

AIを使った人

AIに指示を出した人

AI生成物を販売・公開した人

が行為主体とされます。

これは、

「ワープロで書いた文章は自分が書いたものではない」

と言えないのと同じです。

では、AIを使った音楽制作は違法なのか

ここまで読むと、「AI音楽は危険なのでは」と思われるかもしれません。

しかし、すべてが違法になるわけではありません。

例えば、次のような場合は比較的安全といえます。

特定の原曲を使わず

メロディや構成を模倣せず

「〇〇風」「〇年代風」といった作風レベルに留める

この場合は、翻案ではなく着想の利用と評価される余地があります。

また、原著作者から正式に編曲・翻案の許諾を得ていれば、

AIを使ったアレンジももちろん可能です。

まとめ

AIによる楽曲アレンジについて、重要なポイントを整理すると次のとおりです。

AIが作った音楽に著作権がない場合でも

既存の楽曲をもとにアレンジすれば

翻案権・二次的著作物の問題が生じる

原著作者の許諾なしの販売・配信は原則として不可

AIは著作権を回避する魔法ではありません。

既存の楽曲を使う以上、著作権法の枠組みの中で判断する必要があります。

AI音楽をビジネスとして活用する場合こそ、

「どこまでが合法か」を正確に理解しておくことが重要です。

南本町行政書士事務所 特定行政書士 西本

目次