保育士と保育園のあいだにある法律──現場を支える見えないルール
子どもを預かり、育ちを支える保育士の仕事。
しかしその現場は、やりがいと同時に負担も大きく、
労働時間、人員配置、責任範囲など、法律と密接に関わっている。
「どうして保育士の仕事はこんなに忙しいのか?」
「保育園側はどう法律を守るべきなのか?」
その答えは、“保育士と保育園の間にある法律”に隠れている。
第1章 保育士の働き方は「労働基準法」で守られている
保育士も他の労働者と同じく、労働基準法の保護を受ける。
📌守られるポイント
労働時間(原則1日8時間・週40時間)
残業には残業手当が必要
有給休暇は取得できる
サービス残業は違法
しかし現場では「子どもの前でタイムカードを押せない」「持ち帰り仕事が多い」など
“実質的な長時間労働”が問題になりやすい。
保育士が声を上げにくい職場ほど、
法律とのズレが積み重なっていく。
第2章 人員配置のルールは「児童福祉法」
保育園には、年齢ごとに最低人数の配置基準がある。
この基準を下回ると、
保育の安全が損なわれ、指導や行政処分の対象になる。
ただし現実は、
「休憩中なのに呼び戻される」
「配置基準ギリギリで回す」
など、グレーな運用も多い。
第3章 保育事故と責任の所在
保育中の事故は「誰の責任になるのか」――よくある疑問だ。
⚖️基本ルール
保育園は“預かった子どもに対する安全配慮義務”を負う
園の過失があれば、園(法人)が損害賠償責任を負う
個々の保育士個人に責任追及が及ぶケースは極めて稀
ニュースで“保育士が書類送検”と言われることがあるが、
ほとんどが形式的で、実際の裁判では園側(法人)が主体。
保育士個人が過度に不安を抱く必要はないが、
園側の責任はとても重い。
第4章 ハラスメントと法律
実は、保育園はパワハラ・モンスターペアレント問題が多い職場でもある。
📌適用される法律
労働施策総合推進法(パワハラ防止措置義務)
労働契約法
民法(安全配慮義務)
園長や同僚からのパワハラ、
保護者からの過剰な要求など。
園は“働く人”にも“利用する人”にも、
適切な対応が求められる。
第5章 保育士と園の契約関係
保育士の雇用は、
雇用契約書
就業規則
労働条件通知書
などの書面が必須。
しかし現場では
「書面なし」「口頭だけ」「契約内容が曖昧」
が意外と多い。
契約書の不備は園にも保育士にも不幸を生む。
働き方・責任範囲・勤務時間・給与を明確にするのは義務であり、
トラブルを避ける最も簡単な方法。
結び──保育の質は“法律を守る園”から生まれる
保育士の仕事は、未来の社会を育てる尊い仕事。
だからこそ、その現場を支える法律は、
単なるルールではなく、命と成長を守る柱だ。
労働基準法(働き方を守る)
児童福祉法(子どもの安全を守る)
契約書(雇用関係を守る)
この3つの柱が揃ってはじめて、
保育の現場に「安心」が生まれる。
南本町行政書士事務所 特定行政書士 西本