イミテーションの法的位置づけ

街のショーウィンドウに並ぶ、きらめく宝石。

しかし、その輝きの中には「天然」もあれば「人工」もある。

さらに、「模造石」「ガラス」「キュービックジルコニア」など、

見た目は美しくても“天然ではない”宝石たちが存在する。

こうしたイミテーションジュエリーは違法ではない。

だが、「どう売るか」「どう表示するか」によって、

法的な評価は大きく変わる――。

第1章 イミテーションとは何か

・「イミテーション(模造品)」とは、天然宝石に似せた人工素材の総称。

・代表例:ガラス、キュービックジルコニア、モアッサナイトなど。

・合法的な商材である一方、表示・説明方法を誤ると法的問題に発展。

📍ポイント:

本物そっくりでも「虚偽表示」にならなければ販売可能。

つまり問題は“素材そのもの”ではなく、“伝え方”にある。

第2章 景品表示法とイミテーション

・景品表示法第5条:「実際より著しく優良・有利と誤認させる表示」を禁止。

・「天然ダイヤモンド」と誤認させるような表示は優良誤認表示に該当。

・「ダイヤモンド調」「CZストーン」など、

 素材を明確にした表現は適法。

💬例:

❌「天然ダイヤ相当の輝き!」 → 誤認の可能性あり。

⭕「人工石(キュービックジルコニア)を使用」 → 適法。

第3章 特定商取引法における位置づけ

・訪問販売・通信販売では、素材・加工・価格の真実表示が求められる。

・「天然石と思って買った」「説明と違う」といった場合、

 → 不実告知(特商法第6条)に該当し、契約取消し・返金請求が可能。

・特に通信販売では、**返品・表示義務(特商法第11条)**を怠ると行政処分の対象に。

第4章 不正競争防止法・刑法の観点

・他社ブランドや商標を模倣したイミテーションは、

 → 混同惹起行為(不正競争防止法第2条1項1号)。

・ロゴ・刻印の偽装は、**商標法・刑法(詐欺罪・商標法違反)**の領域。

・つまり、「素材の模倣」と「ブランドの模倣」は法的意味が全く異なる。

第5章 表示と誠実――信頼を築く販売方法

・合法的に販売するには:

1️⃣ 材質(例:キュービックジルコニア)を明記

2️⃣ 「イミテーション」や「人工石」など誤解のない用語を使用

3️⃣ 高額販売する場合は鑑別書・保証書を付ける

・実務的には、宝石鑑別機関の判定をもとに正確な説明を。

📜例:

当商品は人工石(モアッサナイト)を使用したイミテーションジュエリーです。

天然ダイヤモンドではありません。

こうした一文が、信頼と法的安定を守る。

第6章 倫理とブランディングのあいだで

・イミテーションは「偽物」ではなく、「別の価値」。

・SDGsやサステナビリティの観点からも注目されている。

・重要なのは「消費者を欺かないこと」。

 それこそが、法の核心であり、ブランドの信頼の礎。

🕊️結び

宝石の美しさは、素材よりも「誠実な光り方」に宿る。

イミテーションも、本物も、

“正しい表示”と“正直な説明”のもとに輝く。

――法律は、嘘を罰するためではなく、

本物の信頼を守るために存在している。

南本町行政書士事務所 特定行政書士 西本

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