ニュースで「強盗致傷」という言葉を聞く機会が増えました。
現金強奪事件、強盗目的の侵入、そして被害者への暴行。
そこに「致傷(けがを負わせる)」が加わると、罪の重さは一気に跳ね上がります。
強盗致傷罪とは
刑法240条はこう定めています。
強盗が、人を負傷させたときは、無期または6年以上の懲役に処する。
つまり、「強盗致傷罪」は強盗罪の中でも最も重い部類に入ります。
最低刑が“6年”というのは、殺人未遂罪(5年以上)よりも重いケースもあるほど。
それほどまでに、社会は「暴力と金銭の結びつき」に対して厳しい目を向けているのです。
なぜこれほど重いのか
単なる「財産の奪取」ではなく、「人の生命・身体に危険を及ぼす行為」だからです。
強盗致傷罪は、被害者の恐怖心を伴う暴力行為が前提となるため、
刑法上は“人間の尊厳を踏みにじる犯罪”として位置づけられています。
その背景には、人間社会が長い歴史の中で「力による支配」を最も嫌ってきたことがあります。
奪う行為に暴力が混じると、単なる犯罪ではなく、“人の尊厳そのものを壊す行為”になるのです。
実際の刑罰の重さ
裁判例では、たとえ被害者のけがが軽傷であっても、懲役8年以上が科されることも珍しくありません。
共犯関係がある場合や、計画性が高い場合には無期懲役の判決が下されることもあります。
一方で、犯行後に救護活動を行ったり、示談が成立した場合には減軽が認められる可能性もあります。
しかしそれでも、強盗致傷罪は「刑務所に行かずに済む」ような軽い犯罪では決してありません。
被害者に残るもの
強盗致傷の恐ろしさは、被害者に残る心の傷です。
肉体のけがは治っても、「いつまた襲われるかもしれない」という恐怖は消えません。
刑罰の重さは、そうした被害者の心情を社会がどれほど重く受け止めているかの表れでもあります。
結論——「奪う」前に思い出すべきこと
強盗致傷罪が重く罰せられるのは、人間社会の根幹を守るためです。
誰かを傷つけ、何かを奪うことで得る利益は、必ずその何倍もの代償を伴う。
人の痛みを踏みにじることの重さを、
私たちは「刑罰の数字」ではなく、「生きる道の選択」として考える必要があるのかもしれません。
南本町行政書士事務所 特定行政書士 西本