日本の神社には、天照大神や八幡神といった神々に加え、歴代天皇そのものを神格化して祀ったものが数多く存在します。初代・神武天皇から怨霊と化した天皇まで、その存在は日本史の節目に深く関わってきました。ここでは、有名な天皇とそれを祀る神社を時代ごとに紹介します。
目次
初代 神武天皇(じんむ)
橿原神宮(奈良県橿原市)
- 神武天皇が即位したとされる地に明治時代に創建。
- 初代天皇を祀り、「建国の神宮」として広く知られる。
崇神天皇(第10代)
多坐弥志理都比古神社(奈良県磯城郡)
- 崇神天皇は「御肇国天皇」とも称され、国造りに関与したと伝えられる。
- 後世には「神武以来の賢帝」として崇敬され、奈良県内を中心に関連社がある。
応神天皇(第15代)
宇佐神宮(大分県宇佐市)
- 応神天皇を神格化した八幡神を祀る総本宮。
- 全国約4万社の八幡宮の中心であり、武士に篤く信仰された。
石清水八幡宮(京都府八幡市)
- 平安京を守護するために創建。源氏の氏神としても著名。
鶴岡八幡宮(神奈川県鎌倉市)
- 鎌倉幕府の精神的支柱。応神天皇を祀り、鎌倉武士の信仰を集めた。
仲哀天皇(第14代)と神功皇后
香椎宮(福岡県福岡市)
- 仲哀天皇と神功皇后を祀る。
- 仲哀天皇は熊襲征伐の途上で崩御したとされ、後に神格化。
継体天皇(第26代)
氷見神社(富山県氷見市)
- 継体天皇は北陸出身とされ、その地に多くの伝承が残る。
- 氷見市の神社では天皇を祭神とし、地元では「建国の恩人」として信仰される。
天武天皇(第40代)・持統天皇(第41代)
高市御縣彦社(奈良県高市郡)
- 壬申の乱を制し、律令国家の基盤を築いた天武天皇は、神格化され各地に祀られる。
- 妻である持統天皇と並び祀られる場合もある。
崇徳天皇(第75代)
白峯神宮(京都市)
- 保元の乱で敗れ、讃岐に流されて崩御。
- 「日本三大怨霊」の一人として恐れられ、明治期に神社が創建された。
- サッカーや球技の守護神としても知られる。
後白河天皇(第77代)
長谷寺(奈良県桜井市)
- 神社ではないが、後白河天皇を追慕する信仰が残り、供養の場となった。
- 強い政治力と信仰心で、後世に神格的扱いを受ける。
後醍醐天皇(第96代)
吉野神宮(奈良県吉野町)
- 南北朝時代、南朝を率いた後醍醐天皇を祀る神社。
- 明治時代に創建され、「建武中興」を象徴する存在。
後奈良天皇(第105代)
飛鳥坐神社(奈良県明日香村)
- 後奈良天皇の時代に特別な信仰を受けた。現在は直接的な祀りは薄いが、後世に「御霊」として祀られることがある。
後水尾天皇(第108代)
日吉大社(滋賀県大津市)
- 後水尾天皇は特に比叡山延暦寺・日吉信仰に深く関わり、死後に御霊として祭祀の対象となった。
まとめ
- 建国と国家形成 → 神武天皇、崇神天皇、応神天皇
- 地方・武士との結びつき → 仲哀天皇・応神天皇(八幡信仰)
- 怨霊信仰 → 崇徳天皇、後醍醐天皇
- 律令・文化の象徴 → 天武・持統天皇
歴代天皇を祀る神社は、その時代の歴史的背景や人々の心情を映し出しています。単なる「皇室の神社」ではなく、怨霊信仰や武家の守護神として日本社会に根付いた姿は、日本の歴史を理解する上で欠かせない要素といえるでしょう。
大野