先日、【法律コラム】契約書に書いてあるのに損害賠償できない?実は知られていない「法的構成」の落とし穴とは、というブログを書かせてもらいましたが、「もしかして」と思った方、大変鋭い感覚をお持ちだなと思います。
そうです、損害賠償がそうであるなら、解除についてもそうなのかもしれません。
契約書に「いつでも解除できる」と書いてあれば、いつでも契約解除できると思っていませんか?
実はそれ、大きな落とし穴かもしれません。
契約解除は、契約書に書かれているだけでは無条件に有効とはならず、民法などの法律に基づいた根拠(構成)が必要です。
本記事では、契約書の解除条項があっても解除できないケースや、契約解除に必要な法律的要件をわかりやすく解説します。
Contents
✅ 契約書に「解除できる」と書いてあるだけでは足りない?
契約書にこのような文言が書かれている場合があります:
「甲または乙は、いつでも本契約を解除することができる。」
この条文、一見すると便利で自由なように思えますが、以下のような点を無視して解除すると無効や損害賠償の原因になることもあるのです。
📘 契約解除に必要な「法的構成」とは?
契約を一方的に解除するには、以下のいずれかの民法上の要件(=構成)を満たしている必要があります。
法的構成 | 民法の条文 | 内容 |
---|---|---|
債務不履行解除(法定解除) | 第541条 | 相手が契約の義務を果たさなかった場合に解除できる |
契約上の解除特約(約定解除) | 第540条など | 契約書で明確に「○○のとき解除できる」と定めていれば可能 |
合意解除 | 明文化なし | 双方の合意があればいつでも解除可能 |
目的喪失・履行不能 | 第542条など | 目的が果たせなくなった場合は解除できる |
🔎 こんな契約解除は注意!
⚠️ ケース①:契約書に「自由に解除できる」とだけ書いてある
→ 民法のルールと矛盾する場合、無効になるおそれあり。
例:継続的な業務委託契約で、契約直後に「やっぱりやめる」と一方的に解除
➡ 相手がすでに準備していた場合、信義則違反(民法1条)や損害賠償請求の対象に。
⚠️ ケース②:解除の予告期間が定められていない
→ 相手方に突然の解除通知が届いても、解除の効力が将来的になる場合がある。
例:1年更新の顧問契約で即日解除を通告
➡ 裁判所は「相当期間経過後の解除」と判断することがある(=すぐには効力が発生しない)
🏗️ 契約解除が法的に有効となるためのポイント
解除を法的に成立させるためには、以下の要件をチェックしましょう。
チェック項目 | 内容 |
---|---|
契約違反があったか? | 債務不履行による解除ができるか確認 |
契約に明示された解除条件があるか? | 具体的な条件(例:納期遅延●日で解除など) |
合意による解除か? | 双方の合意であれば基本的に有効 |
相手に損害を与えるような突然の解除でないか? | 信義則違反になる可能性に注意 |
解除の通知方法とタイミングは適正か? | 書面通知・相当期間の設定なども考慮 |
📌 契約解除条項の書き方に注意
【望ましい条文例(特約による解除)】
「甲は、乙が本契約に定める義務に重大な違反をし、相当期間を設けた催告にもかかわらず是正されない場合、本契約を解除することができる。」
➡「重大な違反」+「是正機会」+「相当期間」などが盛り込まれているのがポイント。
📝 まとめ:契約解除は「自由」ではない。契約書+法律の整合性が必要
- 契約書に解除条項があっても、民法の要件や信義則に反していれば無効になることがある
- 一方的に解除した場合、逆に損害賠償請求されるリスクもある
- 契約解除には、「なぜ解除が認められるのか?」という法的根拠(構成)が不可欠
💡 不安な契約解除、専門家に相談を
契約解除のトラブルは、契約書の書き方や解除のタイミング次第で大きな損失を招きかねません。
解除条項の有効性や、トラブルの防止方法に不安がある場合は、専門家への相談をおすすめします。
大野