2025年6月6日、行政書士法が大きく改正されました。
今回の改正は、制度の根幹に関わる「使命」や「職責」の明文化、特定行政書士の権限拡大、無資格者対策の強化など、行政書士制度において過去最大級の改正とも言われています。
この記事では、行政書士法改正の内容、条文の新旧比較、施行日、実務への影響などをわかりやすく解説します。

Contents
✅ 行政書士法改正の背景とは?
デジタル化や複雑化する行政手続き、国民の権利救済ニーズの高まりを背景に、行政書士に求められる役割が変化してきました。
これまでの「事務の代理人」から、「国民の権利利益を守る法的専門職」へ。その変化を制度面から支えるために今回の法改正が行われています。
🔍 主な改正ポイント5つ
1. 「使命」の明文化(第1条)
これまで「目的」として定められていた内容が、「行政書士の使命」として明文化されました。
行政手続の円滑な実施や、国民の権利利益の実現を担う存在であることが、法律上明確になります。
2. 「職責」の新設(第1条の2)
新たに追加された「職責」の条文では、以下の2点が明示されました:
- 品位を保持し、法令および実務に精通する努力
- 情報通信技術(ICT)を活用するよう努めること
特にICT対応は、今後の行政手続のデジタル化に不可欠な要素となります。
3. 特定行政書士の対象範囲の拡大(第1条の4)
特定行政書士制度についても改正がなされています。
特定行政書士が不服申し立ての手続きについて代理及びその手続きについて官公署に提出する書類の作成(意見陳述)を行える対象が、行政書士が「作成した書類」から「作成することができる書類」へと広がります。
これにより、より多くの案件に対応可能になり、行政不服申立てなどでも活躍の場が広がります。
4. 無資格業者への報酬禁止の明確化(第19条)
行政書士業務を有資格者以外が行い、報酬を受け取ることを「いかなる名目によるかを問わず」禁止する文言が追加されました。
補助金コンサルなど、グレーゾーン的な無資格業者への強いけん制となります。
5. 両罰規定の新設(第24条の2)
法人事務所や従業員による違反に対して、行政書士法人自体も処罰対象とされる両罰規定が導入されました。
今後は法人単位でのコンプライアンス強化が求められます。
📅 施行日はいつ?
- 公布日:2025年6月6日(令和7年)
- 施行日:2026年1月1日(令和8年)
📜 新旧条文の比較表
項目 | 改正前 | 改正後 |
---|---|---|
第1条 | 行政手続に資する制度の整備 | 行政手続の円滑化、国民の権利利益の実現が使命 |
第1条の2 | ― | 行政書士の職責として、品位保持・実務精通・ICT活用を明示 |
第1条の4 | 行政書士が「作成した」書類 | 行政書士が「作成することができる」書類にまで拡大 |
第19条 | 有資格者以外が業務を行うことの禁止 | 「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」は禁止 |
第24条の2 | ― | 両罰規定を新設。法人にも処罰が及ぶ可能性あり |
⚠ 改正によってどう変わる?実務への影響
● 行政書士の社会的地位が向上
「使命」と「職責」の法的明文化により、行政書士の公共的役割が明確になります。
士業としての信頼性や社会的認知が高まり、他士業との連携も進みやすくなるでしょう。
● ICT対応・業務品質向上が必須に
「情報通信技術の活用」が職責とされたことで、オンライン申請やクラウド管理といった業務DX化が加速します。
スキルアップや業務フローの見直しが求められる場面も増えるでしょう。
● 特定行政書士がさらに頼れる存在に
不服申立てや行政対応に強みを持つ特定行政書士の立場が強化されます。
業務の差別化が進み、実務の選択肢も広がるため、取得者への注目度が増します。
● 無資格コンサル業者の排除が進む
報酬の「名目を問わず」禁止と明記されたことで、補助金・建設業・外国人申請などにおける無資格支援者への牽制が強まります。
行政書士の業務独占性がより強化されるかたちになります。
💡 行政書士として今後とるべきアクション
- 最新の法改正に基づく事務所体制の整備
- 業務のICT化・クラウド化の推進
- 無資格業者との提携リスクの再確認
- 特定行政書士資格の取得を検討
✍ まとめ
今回の行政書士法改正は、単なる文言変更ではなく、制度の本質的な見直しです。
特に、「使命」「職責」の明文化や、ICT活用義務、無資格業者対策など、今後の業界のあり方に大きな影響を与える改正といえるでしょう。
行政書士として信頼される存在になるためにも、今回の改正内容をしっかりと理解し、事務所経営や実務に活かしていきましょう。
南本町行政書士事務所