退職代行業者が逮捕?「弁護士法違反」とは何が問題だったのかをわかりやすく解説
最近、「退職代行業者が弁護士法違反で逮捕された」というニュースを目にした方も多いのではないでしょうか。
退職代行自体はすでに一般的なサービスになっていますが、
「何をやると違法になるのか」
「どこまでなら合法なのか」
この線引きは、意外と知られていません。
この記事では、
- 弁護士法とはどんな法律なのか
- 何が禁止されているのか
- 今回のニュースはどこが問題になったのか
を、できるだけ噛み砕いて解説します。
そもそも弁護士法とは?
弁護士法は、その名のとおり
「弁護士という専門職をどう位置づけ、どんな業務を独占させるか」
を定めた法律です。
ポイントはここです。
法律トラブルに関する“代理・交渉”は、原則として弁護士しかできない
なぜかというと、
- 法律判断は難しく
- 当事者の権利義務に重大な影響が出る
- いい加減な対応をされると人生が壊れかねない
からです。
つまり弁護士法は
「国民を守るための資格独占ルール」
でもあります。
弁護士法で禁止されていること(超重要)
今回のニュースで問題になるのは、主に次の規定です。
非弁行為(ひべんこうい)
弁護士法72条では、こう定められています。
弁護士でない者が、
報酬を得る目的で、
法律事件について、
代理・仲介・和解交渉などを行ってはならない
これを一般に
「非弁行為」
と呼びます。
具体的に何がアウト?
ざっくり言うと👇
❌ 会社と退職条件を交渉する
❌ 有給消化や退職日の調整を会社とやり取りする
❌ 退職を拒否された場合に法的主張をする
❌ 未払い残業代や損害賠償の話を持ち出す
これらはすべて
「法律関係に踏み込んだ交渉」
にあたります。
じゃあ、退職代行は全部違法なの?
ここが一番誤解されやすいところです。
違法ではありません(ただし条件付き)
退職代行そのものが違法なわけではありません。
合法なのは、あくまで👇
- 本人の意思を「伝えるだけ」
- 交渉・法律判断を一切しない
例えば、
「本人は退職の意思を固めています。
本日付で退職の意思表示があったことをお伝えします。」
ここまでなら、
単なる伝言係
なので問題ありません。
退職サービスはどこが問題だったのか
問題視されたものの一つは
- 退職代行業者が
- 会社側と
- 退職条件についてやり取り・調整・交渉をしていた
つまり、
「辞めます」ではなく
「どう辞めるか」「いつ辞めるか」「条件をどうするか」
に踏み込んだ可能性が高い、という点です。
これは完全に
弁護士しかできない領域
です。
そのため、
- 弁護士資格がない
- にもかかわらず
- 報酬を得て交渉した
→ 弁護士法違反(非弁行為)
という評価になります。
弁護士法違反は「交渉」だけじゃない
弁護士法違反=非弁行為、というと
「交渉したかどうか」
だけが注目されがちですが、実はそれだけではありません。
ポイントは条文のこの部分
弁護士法72条では、禁止されている行為として
- 代理
- 和解
- 仲介
- 周旋(紹介)
が並んでいます。
つまり、
弁護士でない者が、報酬を得る目的で
法律事務を“紹介する”こと自体もアウト
という構造です。
「紹介しただけ」でもアウトになるケース
ここが直感に反するところですが、こういう場合です👇
- 退職トラブルを抱えた人を
- 弁護士や法律事務所に
- 報酬をもらって紹介する
これ、やってしまいがちですが
完全に弁護士法違反のど真ん中です。
なぜかというと、
- 依頼者は「誰を信じればいいか」判断できない
- 紹介者の金銭的都合で誘導される
- 弁護士の独立性が損なわれる
という問題があるからです。
ニュースに当てはめると
今回報道されている内容をよく読むと、
- 退職代行業者が
- 表向きは「代行サービス」を装いながら
- 実際には
- トラブル案件を集め
- 弁護士に流し
- その対価として報酬を得ていた
という構図が見えてきます。
つまり、
❌ 自分で交渉した
というより❌ 「法律トラブル案件を集客し、報酬目的で弁護士に回した」
この点が
「紹介型の非弁行為」
として評価された可能性が高い、というわけです。
なぜ紹介がそんなに問題になるのか
「いい弁護士を紹介してるだけでは?」
と思う人も多いですが、法制度上はこう考えます。
- 法律トラブルは弱者が陥りやすい
- 紹介料が絡むと
- 誰に
- どんな基準で
- なぜ紹介されたのか
が不透明になる
結果として、
“依頼者のため”ではなく
“紹介者の利益のため”の法務市場になる
これを防ぐため、
弁護士法は紹介行為にも厳しいんです。
交渉型と紹介型、どちらが重い?
実務的な感覚でいうと、
- 単発のグレーな交渉 → 行政指導止まりのこともある
- 組織的・反復的な紹介ビジネス → 刑事事件化しやすい
今回「逮捕」まで行っている点を考えると、
- 継続性
- 収益性
- 組織性
このあたりが強く認定された=
紹介型非弁の可能性はかなり高い
と見るのが自然です。
なぜ「逮捕」まで行くのか?
「行政指導で済むのでは?」と思う方もいるでしょう。
ですが、
- 継続的
- 組織的
- 悪質
- 被害者が多数
と判断されると、
刑事事件として立件されることがあります。
弁護士法違反は
3年以下の懲役または300万円以下の罰金
という、れっきとした犯罪です。
利用者側が知っておくべき注意点
ここも大事です。
利用者は基本的に処罰されない
非弁行為の処罰対象は
業者側
です。
利用したからといって、通常は利用者が罰せられることはありません。
ただし、
- 交渉が必要なケース
- 会社が強硬
- トラブルが拡大しそう
こういう場合は、最初から
弁護士が運営する退職代行
を選ぶのが安全です。
まとめ:本質
最後に整理します。
- 弁護士法は「法律トラブルを扱える人」を厳しく限定する法律
- 退職代行であっても
- 交渉
- 条件調整
- 法的主張
をすれば非弁行為
- 今回の逮捕は
「退職代行のやりすぎ」ではなく
「法律の一線を越えた」ことが問題 - また、
「退職代行がやりすぎた」のではなく
「法律事務の集客・紹介ビジネスに踏み込んだ」
ここが一線超えだった、という話です。
退職代行という看板は
あくまで“入口”で、
問題視されたのは
その先の構造。
この視点を入れると、ニュースの見え方、だいぶ変わります。
退職代行は便利なサービスですが、
「何をしてくれるのか」ではなく
「何をしてはいけないのか」
を理解することが重要です。
大野