これまで、当サイトでは 不動産賃貸における原状回復 や、契約解除に伴う原状回復 について解説してきました。
しかし、法律上の原状回復は 契約の取消し にも存在します。
今回は、民法121条の2を根拠に、契約取消に伴う原状回復の仕組みを具体例とともにわかりやすく解説します。
目次
1. 契約取消とは
契約取消とは、契約が成立しても 法律上の瑕疵や事情 を理由に、その契約を初めから無効にすることです。
主な例:
- 未成年者が親の同意なしで契約をした場合(民法5条、7条)
- 詐欺や強迫によって契約した場合(民法96条)
2. 原状回復の法律上の根拠:民法121条の2
第1項
無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。
契約を取り消した場合、受け取ったお金や物を返す義務が生じます。
第2項
無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者が、給付を受けた当時その行為が無効であることを知らなかった場合、返還義務は現存利益の範囲に限られる。
贈与や無償契約の場合、既に消費してしまった物については返還義務が制限されます。
第3項
行為の時に意思能力を欠いていた者、または制限行為能力者は、返還義務は現存利益の範囲に限られる。
未成年者や制限能力者が行った契約でも、返還義務は受け取った利益の範囲内に限定されます。
3. 契約取消に伴う原状回復の具体例
例1:未成年者の契約取消
- 状況:17歳のAさんが親の同意なしにスマホを購入
- 取消:親が契約を取り消す
- 原状回復:
- Aさんはスマホを返す
- 販売店は代金を返す
例2:詐欺による契約取消
- 状況:Bさんが虚偽説明で車を購入
- 取消:Bさんが契約を取り消す
- 原状回復:
- Bさんは車を返す
- 販売店は代金を返す
4. まとめ
- 契約を取り消すと、民法121条の2により 原状回復義務 が発生します。
- 契約は初めから無効とみなされ、互いに受け取った利益を返還する必要があります。
- 無償契約や意思能力に制限がある場合、返還義務は受け取った現存利益の範囲に限られます。
契約取消の原状回復を理解しておくことで、未成年者契約や詐欺契約、無償契約のトラブルを未然に防ぐことができます。
大野