最近、“石破総理が自民党総裁を辞任した”というニュースを見た。でも、まだ総理であるように見える。どういうこと?総裁が空席になっているの?総理と総裁の違いは?総裁選で新総裁が決まったら石破氏は総理でいられるの?――こういった疑問を持つ人は多いはずです。この記事では、総裁と総理の役割の違い、なぜ総裁を辞任しても総理を続けられるのかを制度的・現状の報道の両面から解説します。
1. 「総裁」と「総理大臣」は何が違うか?制度上の関係
まず基本制度から整理します。
項目 | 総理大臣(首相) | 自民党総裁 |
---|---|---|
法的・制度的根拠 | 日本国憲法に基づく国家の行政のトップ。国会(衆議院・参議院)の指名で就く。 | 政党(この場合は自民党)の代表。党の規約・党内ルールによる。 |
任命・選出の仕組み | 国会で投票(指名選挙)される。過半数の支持が通常必要。 | 自民党員や所属国会議員、都道府県連などの党員・党友票、議員票などによる総裁選で選ばれる。制度には「任期」など党内ルールがある。 |
任期・辞任の扱い | 総理は国会の信任関係・内閣不信任可決などで辞任や総辞職が制度として定められている。憲法70条なども関連。 | 総裁は党の規定に従い任期満了や途中辞任などによる。党内の支持がなくなれば辞任することも。 |
このように、「総理=国の行政のトップ」、**「総裁=与党・政党のトップ」**であり、別個の制度です。混同しやすいですが、辞任や選挙の扱いも異なります。
2. 石破総理が「自民党総裁を辞任表明」したが、なぜまだ総理なのか
報道によれば:
- 石破茂氏は2025年9月7日、自民党総裁を辞任する意向を正式に表明しました。
- ただし、「総裁を辞任する」と言っても、それと同時に「総理大臣を辞める」とは言っておらず、また制度的にも総理の職は引き続き継続可能です。
- 石破氏自身も「新しい総裁が選ばれるまでの間は、責任を果たす」と述べており、総理としての職務を続けることを明言しています。
つまり、「自民党総裁を辞任する意向」は政党内リーダー(総裁)としての責任を降りるという意思表示ですが、それだけでは憲法や国会から見て総理大臣の地位に直ちに法的変化をもたらすものではありません。
3. 総裁は空席となるか?総裁の仕事は誰がしているか?
- 自民党総裁を辞任すると表明した時点では、「総裁選手続きを開始してください」という意思も示しており、党内で総裁選を行って後継者を選ぶ段階にあります。
- したがって、「総裁職が即時に空席になる」のではなく、一定期間は辞任意向をもった現職の総裁(石破氏)がその職務を継続することになります。後任総裁が正式に選ばれるまで、総裁としての義務や責任を果たすわけです。
- 総裁選挙が終わるまで、党代表としての総裁の仕事(党務・党代表としての発言・党内調整など)は石破氏が担当し続けます。これと並行して、総理としての国政・内閣運営の責任もあります。
4. 総裁選で新総裁が決まったら、石破総理は総理を続けられるか?どうなるのか?
この点も多くの人が疑問に思うところですが、制度・慣習からすると以下のようになります:
- 総理大臣(現在の内閣)は、憲法・法律に定められたケース(不信任可決・衆院解散・総選挙など)や、総理自身の辞意表明・総辞職などがない限り、続投することは可能です。総裁の変更だけでは、総理の地位が自動的に失われるわけではありません。
- しかし実務的・政治的には、新総裁が自民党代表となったら、その人物が総理大臣就任を目指すことになります。なぜかというと、与党のトップ=政権の責任者である総理という体制との整合性が求められるためです。国会で新総裁(かつ与党代表)が総理指名を受けることになるのが普通の流れです。
→ したがって、総裁が交代した後、「総理も交代する」のが慣例的・実質的な動きになります。
もし石破氏が「新総裁が決まった後も自分が総理を続けたい」と言い出す場合、制度的には可能かもしれませんが、以下のハードルがあります:
- 国会の指名で新総理を決める必要がある:新総裁である人物が国会で総理指名を受ければ、石破氏は任を解かれる。もし新総裁が総理指名を受けないなら、理論的には石破氏が総理で残る可能性も残るが、現実的にはありえない。
- 内閣の総辞職の慣習:総裁交代が明確になれば、現在の内閣は通常「総理交代に伴う内閣総辞職」を行い、新総裁が新しい内閣を組織します。これが流れとして定着しています。
- 党内・与党・支持基盤の同意:政治的正統性・支持者・党人・国民・マスメディアなどの圧力があり、新総裁に総理の職を譲る期待が強いため、「石破が残る」ことは反発を招くでしょう。
5. 「総理を選ぶ選挙」という見方は正しいか?
「総裁選で総裁が決まった際、石破内閣が自発的に総辞職することが前提」という理解は、おおむね慣習的に近いですが、制度として義務付けられているわけではありません。
- 憲法上、「内閣総理大臣が欠けたとき」には内閣総辞職が義務づけられています。
- 総裁辞任そのものは、「総理大臣が欠けたとき」には該当しません。総理大臣とは別の職務です。
- ただし、党の代表者が変わることで与党内部の意思統一・責任の所在を明確にすることが求められるため、総裁選後に新総裁が総理指名を受けるのが通常で、実質的にこの「総裁選」が「次の総理を決める選挙」に近い性格を帯びます。
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6. 現在の報道状況から見たケース(石破総理の場合)
実際の報道で確認できること:
- 石破総理は、「新しい総裁が選ばれるまで責任を果たす」としており、総裁選手続きを党に委ねている。
- 石破氏自身は「次の総裁選には立候補しない意向」を示しています。
- 総裁選は「自民党総裁選」の形式を確認中で、フルスペック(全国の党員・党友票も含める方式)か簡易型かが議論されています。
- 新総裁が決まれば、その後、通常は総理指名選挙が国会で行われ、新総裁が総理になる見通し。石破総理の退任が正式になる。
7. まとめ:ユーザー視点で知っておきたいポイント
- 総裁辞任の表明=総理辞任ではない。制度上も法的にも異なるポストなので、総理は残れる。
- 党のトップ(自民党総裁)は辞任表明しても、後任が選ばれるまでは現職が責任を持って務める。
- 新総裁が決まったら、通常はその人物が国会で総理指名を受け、総理も交代する。だから「総理を選ぶ選挙」という言い方がされることもある。
- 制度的な不可欠性よりも、「政局」「党の支持」「国民世論」「国会の動き」など政治の現実が、この交代の流れを決める。
大野