表現の自由と主張の対立 ― 民主主義を守るためにできること

憲法21条は「表現の自由」を保障しています。これは民主主義の根幹を支える重要な権利であり、選挙やデモ、集会など、多様な意見が社会に出ていくことを可能にしてきました。しかし近年、この権利を乱雑に使い、他者の活動を妨害するような場面が多くなってきているといわれています。

たとえば、手続きを踏んで道路使用許可を得たり、場所を借りたり、料金まで支払って正規に活動しているにもかかわらず、プラカードや大声でのヤジによって活動の妨害する――こうした状況に直面する人は少なくありません。

表現の自由にも「限界」がある

表現の自由といえども無制限ではなく、憲法は「公共の福祉」による制約を認めています。具体的には次のような場合、すでに違法となり得ます。

  • 誹謗中傷や名誉毀損、侮辱
  • 威力業務妨害
  • 選挙の自由妨害(公職選挙法違反)

つまり、正規の活動を妨害する行為は「表現の自由の濫用」と評価され得るのです。

「力で対抗」は認められにくい

では、妨害者に対してプラカードや拡声器を壊す、押し返す、といった実力行使は許されるのでしょうか。

刑法36条の正当防衛や37条の緊急避難が頭に浮かびますが、現実には表現行為への対抗措置として成立するのは極めて難しいです。暴力や破壊行為は「やりすぎ」と判断され、過剰防衛にあたる可能性が高いのです。

では、公的機関は動いてくれるのか、というとこれも難しくなってきているといわれています。

その背景には、「選挙演説ヤジ排除事件」など、警察が排除した市民の行為を裁判所が「表現の自由の侵害」と認定した判例もあり、警察も安易に動けなくなっている現実があります。

公的機関を呼ぶ前にできること

それでは、放置するしかないでしょうか。実際には、実力行使以外にできる対応があります。

  1. 証拠を残す
    妨害の様子を録音・録画し、客観的証拠を確保する。
  2. 会場管理者に協力を求める
    使用許可を出している役所や施設管理者に妨害者への対応をお願いする。
  3. 防御的な工夫
    音響機材の配置や人の配置で妨害を最小限に抑える。
  4. 民事的な警告
    内容証明郵便や弁護士名での警告を送ることで抑止効果を狙う。

まとめ

表現の自由は尊重されるべきですが、他者の活動を妨害する行為は許されるものではありません。とはいえ、私人による力での排除は法的に認められにくく、後に自らが責任を負うリスクが大きいのも現実です。

だからこそ、現場では「証拠化」や「管理者への依頼」などの合法的手段をとり、後に警察や裁判所という公的機関に訴える準備を整えておくことが大切です。

「その場は冷静に耐え、後に正当に反撃する」。それが、民主主義社会における正しい表現の自由の守り方だといえるでしょう。

主義主張が異なることは仕方がありません。意見がぶつかるというのは健全な民主主義国家のあるべき姿だと思いますが、どちらか一方の主張は一切認めない、だから妨害するのではなく、建設的な議論ができるようになってほしいと思います。

大野

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