毎年夏になると、日本各地で「お盆」の風習が行われます。家族が集まり、お墓参りをしたり、迎え火・送り火を焚いたり、精霊馬を飾ったりと、さまざまな形でご先祖さまを迎えるこの時期。一方でふと疑問に思う方もいるのではないでしょうか?
「お盆って仏教の行事なの?神道ではしないの?神社と関係あるの?」
今回はそんな「お盆の正体」に迫ります。
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■ お盆のルーツは仏教の「盂蘭盆会」
お盆は、仏教経典『盂蘭盆経(うらぼんきょう)』に由来する行事です。インドの高僧・目連(もくれん)尊者が、餓鬼道で苦しむ母親を救うために、僧侶たちに供養を捧げたという話がもとになっています。
この教えが中国、日本へと伝わり、**毎年7月15日(または旧暦8月15日)に先祖供養を行う「盂蘭盆会(うらぼんえ)」**として根付いていきました。現在では多くの寺院で、先祖の霊を供養する法要が営まれています。
■ でも、ただの仏教行事ではない
日本では、仏教だけでなく古来の民間信仰や神道の影響も強く受けてきました。特に根強いのが「祖霊信仰」です。
古代の日本では、人が亡くなるとその魂は「祖霊(それい)」として家を見守る存在になると考えられてきました。この祖霊が一年に一度帰ってくる――という信仰が、仏教の盂蘭盆と重なり、今のような「お盆」が生まれたのです。
■ 神道ではお盆をしない?
神道には「お盆」という行事は存在しません。ただし、亡くなった人の魂を「御霊(みたま)」として祀る考え方があり、祖先を大切にするという点では共通しています。
神道では、人が亡くなるとやがて神様のような存在となり、子孫を見守る「氏神」や「家の守り神」になると考えられています。これが「祖霊信仰」であり、神社で行われる「霊祭(みたままつり)」などがその具体例です。
■ 神社とお盆の関係はあるの?
基本的に、神社でお盆の法要や先祖供養を行うことはありません。それは、先祖供養は仏教寺院の役割だからです。
しかし例外もあります。たとえば靖国神社などでは、毎年7月中旬に「みたままつり」を開催しています。これは戦没者の御霊を慰める神道行事であり、時期的にはお盆に近いため、「神社でお盆をしている」と誤解されることもあります。
■ 日本人にとって「先祖」は神にもなる
日本では「八百万の神(やおよろずのかみ)」という考えがあるように、自然の神、土地の神、そして人の魂(祖霊)もまた神となるという発想があります。仏教では「成仏」、神道では「神霊化」、いずれも亡き人を尊い存在として敬うものです。
そのため、お盆という行事は「仏教の教え」だけでは説明できず、神道や古くからの日本的な祖霊信仰、地域の風習が混ざり合った、日本ならではの文化的融合だといえるでしょう。
■ まとめ:お盆は日本の心を映す鏡
観点 | 内容 |
---|---|
仏教 | 『盂蘭盆経』に基づく先祖供養の法要。 |
神道 | 「祖霊信仰」により、死者の魂を敬う文化が根付いている。 |
民俗 | 迎え火・送り火、精霊馬、盆踊りなどの風習が広く伝承。 |
お盆は、仏教行事でありながら、神道的な考え方や日本人の死生観が深く染み込んだ年中行事です。
家族で静かにご先祖さまを想い、感謝する――そんな時間が、現代の私たちにも必要なのかもしれません。
大野