「八百万の神(やおよろずのかみ)」という言葉を聞いたことはありますか?
古事記や日本神話の解説動画、あるいは神社の由緒書きなどでよく登場する言葉ですが、改めて意味を問われると少し迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「八百万の神」とはどんな存在なのか、天照大御神との関係、神社や現代の信仰とどうつながっているのかをわかりやすく解説します。
Contents
■ 八百万の神とは?──「無数の神々」という世界観
まず、言葉の意味から見ていきましょう。
「八百万(やおよろず)」は、**数字の「800万」ではなく、「ものすごく多い」「無限に近いほどの数」**という意味です。
つまり「八百万の神」とは、
この世のあらゆるものに神が宿っているという考え方
をあらわした言葉です。
山・川・風・火といった自然現象、さらには道具や言葉、感情、行為、時間といった抽象的なものまで、すべてに神性が宿ると考えるのが日本の伝統的な信仰です。
これを「アニミズム(精霊信仰)」とも言います。
役割・立ち位置 | 内容 |
---|---|
神々の総称 | 天照大御神や須佐之男命(すさのおのみこと)、大国主命(おおくにぬしのみこと)など、有名な神々から、名前もないような自然神までを含む総称 |
万物に宿る神性 | 木や石、水、風などの自然現象にも神が宿るとするアニミズム的信仰 |
社会秩序の守り手 | 各地の神社で祭られ、五穀豊穣、商売繁盛、厄除けなど、暮らしに密接に関係する存在 |
使いとの関係 | 神の「使い」(八咫烏=やたがらす、狐、蛇など)を通じて人間と関わる場面が神話にも登場する |
■ 天照大御神も「八百万の神」の一柱(ひとはしら)
「八百万の神」と聞くと、どこかぼんやりした存在に感じられるかもしれませんが、実は『古事記』などに登場する有名な神々もこの中に含まれます。
- 天照大御神(あまてらすおおみかみ):太陽神、皇室の祖神
- 須佐之男命(すさのおのみこと):海や嵐の神
- 大国主命(おおくにぬしのみこと):縁結びの神、国づくりの神
彼らも「八百万の神」の中の一柱として描かれており、日本神話の世界では、彼らが互いに会議をしたり、使いを出して交渉したりする場面もあります。
■ 古事記にも登場!八百万の神の「会議」
たとえば、有名な神話のひとつに「天岩戸(あまのいわと)」のエピソードがあります。
天照大御神が天の岩戸に隠れて世界が真っ暗になってしまったとき、多くの神々(八百万の神)が集まり、どうすれば彼女を引き出せるかを話し合う場面があります。
このように、八百万の神々はただの数の表現ではなく、人格や意志を持った存在として、物語の中で活躍することもあるのです。
■ 神社と八百万の神の関係
日本全国にある神社は、すべて何かしらの「神様」を祀っています。
- 伊勢神宮 → 天照大御神
- 出雲大社 → 大国主命
- 伏見稲荷大社 → 稲荷神(宇迦之御魂神 など)
このように、個別の神をお祀りする神社がたくさんありますが、これらの神々はすべて八百万の神の一部とされています。
つまり、神社の信仰も「八百万の神」という思想の延長にあるのです。
■ 生活に息づく八百万の神──現代にも続く信仰
八百万の神の考え方は、今でも私たちの生活に根づいています。
- 家の台所には火の神
- トイレには厠(かわや)の神
- 道具を大切に扱う心(針供養、筆供養など)
- 神棚や地鎮祭のような風習
こうした一つひとつが、「ものや自然に神が宿る」という八百万の神の考え方を背景に持っているのです。
■ まとめ:八百万の神は、日本人の「感謝」と「畏敬」の象徴
項目 | 内容 |
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八百万の神とは | 「無数に存在する神々」=この世のあらゆるものに宿る神性の象徴 |
天照大御神との関係 | 八百万の神の一柱で、特に重要な神格 |
立ち位置 | 神話世界や現代の神社信仰において中心的な概念 |
神社との関係 | 神社は特定の神を祀るが、それも八百万の神の一つ |
民間信仰との結びつき | 山の神、川の神、トイレの神まで、生活全般に神が宿るとされる |
「八百万の神」とは、ただの宗教的な言葉ではなく、日本人の自然との付き合い方、モノや人との向き合い方を象徴する言葉でもあります。
自然を恐れ、敬い、感謝し、目に見えないものにも心を向ける。
この繊細な感覚が、「八百万の神」という形で神話や信仰として表現されてきたのです。
天照大御神のような大きな神も、名もなき草木や石に宿る神も、すべてがつながって存在している。
それが日本の神様の世界観であり、「八百万の神」の真髄といえるでしょう。
大野