循環論法とは何か?意味と定義

**循環論法(じゅんかんろんぽう、Circular Reasoning)**とは、結論を前提に含めてしまっている論理の誤りのことです。
言い換えると、証明されるべき主張を、すでに前提として使ってしまっているため、話が堂々巡りになり、根拠として成立していないという状態です。

例:「この本は正しい。なぜならこの本にそう書いてあるから。」

このように、主張の正しさを主張自身で支えてしまっていると、聞き手は納得できず、議論が成立しません。

トートロジーとの違いと関係性

**トートロジー(tautology)**は、論理的に常に真となる命題や、言い換えに過ぎない表現を指します。循環論法と似ていますが、次のような違いがあります。

概念定義問題点
循環論法結論を前提に含んでしまう論証の誤り「神が存在するのは、聖書にそう書いてあるから。聖書は神の言葉だから。」説得力がない(証明になっていない)
トートロジー同じことを繰り返すだけで、意味のある説明になっていない「AはAである」「人気のある商品はよく売れる」情報が増えていない、思考停止の原因に

トートロジーは論理的な誤りではなく、内容の空虚さや無意味さの問題です。

一方で、循環論法は**論理的な誤謬(fallacy)**です。

なぜ循環論法が問題なのか?|会話や議論で使ってよいか?

原則として、循環論法は避けるべき

循環論法は議論や説明の中で非常に説得力に欠けるため、基本的には避けるべきです。以下のような問題点があります。

  • 相手を納得させられない(根拠がなく、思考停止に見える)
  • 議論が進まない(結論に対して異論が出た場合、繰り返すしかなくなる)
  • 論理的に破綻していると見なされ、信用を失う可能性がある

ただし、一部の場面では“あえて”使うケースも

以下のような場面では、あえて循環論法やトートロジーに近い表現が使われることがあります。

① キャッチコピーや広告の印象付け

  • 例:「うまいから売れる、売れてるからうまい。」
  • → 根拠になっていないが、“人気=正義”という印象操作を狙っている。

② 日常会話での安心感や共感の演出

  • 例:「好きだから好きなんだよね。」
  • → 論理ではなく感情の表現として許容される。

③ 権威や信念をもとにした自己完結的な立場

  • 例:「これは正しい。なぜなら我々の教義がそう定めているから。」
  • → 宗教や信条に基づく主張では、内部的には“完結”しているが、外部に対しては通用しにくい。

循環論法の例をいくつか紹介|見抜くコツは「前提と結論の一致」

以下に、典型的な循環論法の例を紹介します。前提と結論が同じになっていないかに注目しましょう。

例1:学校のルールだから守るべきだ

「校則を守らなければならない。なぜなら校則でそう決まっているから。」

→ 校則の正当性が前提となっており、なぜ守るべきかの説明になっていない。

例2:リーダーだから指導力がある

「あの人はリーダーだから指導力があるに決まっている。」

→ リーダーに選ばれた理由が「指導力」なのか、「肩書き」が先なのか不明確で、堂々巡り。

例3:この薬が効くのは効果があるから

「この薬は効果がある。なぜなら効くからだ。」

→ 同じことを言い換えているだけで、根拠になっていないトートロジー型の循環論法。

まとめ|循環論法は思考の迷路。論理的な説明を心がけよう

  • 循環論法とは、結論を前提としてしまう論理の誤り
  • トートロジーとは、言い換えや自己完結的な表現
  • 論理的な議論では使うべきではないが、日常や広告では“効果的に使われる”こともある
  • 使う場合は、場面を選ぶことと、相手に通じるかどうかを意識することが大切

大野