「ですが総理、自国の利益のために他国に犠牲を強いるのは覇道です」
「わが国では人徳による、王道をいくべきということか」
映画「シン・ゴジラ」でのワンシーンです。

現在では、王道といえば、定石・定番・オーソドックスという意味合いで使われることが多いですが、王道・覇道は政治思想の言葉でもあります。

王道とは、人徳をもって政治を行うこと
覇道とは、武力や権謀を背景に政治を行うこと

人徳とは、人が身に得た品性や知性、生まれつき備わった能力、天性
権謀とは、巧妙に人を欺くはかりごとを弄すること

王道は徳で物事が動くので、「思いやり」や「道理」で政治を動かすことになります。
この場合、人々は為政者の「徳」に慕っているので、安定的に政治を行うことができます。

覇道は武力によって物事が動くので、「力」で政治を動かすことになります。
この場合、人々は為政者の「力」に恐怖し従っているだけであるため、支持を失うと、すぐに崩壊してしまいます。

昔の日本でいうと、天皇が政治を行うことが王道、武家(源氏・平氏・豊臣・徳川)が政治を行うことを覇道といえるでしょう。

王道は思いやりの精神で政治を動かし、理想を追求すること
覇道は力をもって政治を動かし、現実を追求すること

「自国のために他国に犠牲を強いるのは覇道」というセリフは大変うまく作られたものであるといえます。
自国の利益を守ることはどの国にとっても最重要なことです。
最重要なことですが、自国の利益のために他国(他者)に犠牲を強いることは、「力」による政治ゲームをしているにすぎません。
今でいうと、核を保有することで政治発言を強めることが覇道ということになりますね。

言葉で説得を続けることが多い、日本のスタンスは王道といえます。
何かを無茶なことを求められたときに、自国のみならず周辺の国のことまで思いを馳せる日本の精神は素晴らしいです。
「日本人の信条は察しと思いやり」とどこかのアニメでも言われていましたが、その通りだと思います。

ただ、思いを馳せすぎて発言力が小さくなる・言いたいことを言えないことになってしまっては意味がないので、強気に出ることも、ときには大切ですね。
パワーゲームには参加しないが、発言力は持ち続ける外交が理想です。

覇道が覇権を握ってしまうと、恐怖政治が待っているかもしれませんから。

大野