父親から「何がしたいんだ」と聞かれた以降、自分を見つけるために太郎は必至で父親の手伝いをした。
そして、母親のすすめでお見合いをし、涼子という女性と結婚し、子宝にも恵まれた。
守りたいものができた太郎は、父親が言っていた言葉の意味を少しだけ理解したた。
一人で漁に出たときも少しずつではあるが、成果が出始め、時には大物のマグロを釣れたこともあった。
自信がついてきた太郎を父親は嬉しそうに見ていた。「それでいいんだ太郎。」
数年後、父親が亡くなり、漁師を継ぐことになった太郎は、生き抜くため・守りたいものを守るため、今まで以上に必死に働いた。
しかし、食環境が変わり、魚から肉への傾向が高くなり、大物を釣ったとしてもそれほどのお金にはならなくなった。
そう、また太郎を取り巻く環境が悪くなってしまったのだ。
太郎が漁に出る回数が少なくなってしまった。
妻の涼子は太郎が漁に出る回数が少なくなったことにたいして特に何も言わなかった。
貯金も尽きそうだが、涼子は内職を掛け持ち、家計を支えていたが、涼子の体も限界に達していた。                    続く(大野)