遺言書とは?法的に有効な遺言書の基本を大阪の行政書士が解説
遺言書とは何か
遺言書とは、自分の死後に財産をどのように扱うかについて意思を示す、法的に認められた文書です。
民法では、一定の方式に従って作成された遺言のみが効力を持つと定められており、これを満たさないものは遺言として扱われません。
日常的なメモや、家族への口約束、などでは、たとえ本人の意思が明確であっても、原則として法的効力はありません。
遺言として効力を持たせるためには、法律で定められた形式・要件を満たす必要があります。
遺言書は、単なる希望やお願いではなく、民法に基づく「最終の意思表示」として扱われます。
そのため、正しく作成された遺言書は、相続の場面において重要な判断基準となります。
遺言書の法的効力とは
遺言書に何を書いてもいいのでしょうか?
遺言内容の実現の保障の対象はどうなっているのでしょうか。
どのような内容を書いても基本的に問題ないのですが、遺言書に記された内容が法的に実現される(保障される)のは以下に関する事項です。
- 相続に関すること
・相続人の廃除・取り消し(民法893条、894条)
・相続分の指定・指定の委託(民法902条)
・遺産分割方法の指定・分割禁止(民法908条)
・遺産分割における担保責任に関する別段の意思表示(民法914条)
・遺留分減殺方法の定め(民法1034条但書) - 相続以外による財産の処分に関すること
・遺贈に関する事柄(民法964条等) - 身分関係に関すること
・遺言による認知(民法781条第2項)
・遺言による未成年後見人・未成年後見監督人の指定(民法839条第1項、848条) - 遺言の執行に関すること
・遺言執行者の指定(民法1006条第1項等)
遺言でできること
遺言書によって、主に次のような内容を法的に定めることができます。
- 相続分の指定
法定相続分とは異なる割合で、各相続人が相続する割合を指定することができます。 - 遺産分割方法の指定
特定の財産を、誰が取得するかを具体的に指定することができます。 - 相続人以外への遺贈
相続人ではない第三者(内縁の妻・友人)や団体に対して、財産を譲ることも可能です。
これらは、遺言書があることで初めて実現できる内容も多く、相続手続きにおいて重要な役割を果たします。
遺言でもできないこと
一方で、遺言書であっても、すべてを自由に決められるわけではありません。
- 相続人の廃除などについては、家庭裁判所の関与が必要となるなど、遺言書だけでは完結しない場合があります。
- また、一定の相続人には「遺留分」と呼ばれる最低限の取り分が法律で保障されており、これを完全に排除することはできません。
法律で定められた「遺留分」を侵害すると遺言が一部無効になることもあり、正確な作成が必要です。
遺言書は強い効力を持つ一方で、法律上の制限があることも理解しておく必要があります。
遺言書はいつ作るべきか
遺言書は「高齢になってから作るもの」と考えられがちですが、これは必ずしも正確ではありません。
重要なのは年齢ではなく、判断能力が十分にある状態で作成することです。
遺言書は、作成時に本人の判断能力が認められない場合、無効と判断される可能性があります。
そのため、病気の進行や体調の悪化が見られる段階で作成すると、後に有効性を争われるリスクが高くなることがあります。
将来に備えるという意味では、元気なうちに作成しておくことが、結果的にリスクを減らすことにつながります。
遺言書にはいくつかの種類がある
遺言書には、主に次のような種類があります。
- 自筆証書遺言
本人が全文を自筆で作成する遺言書で、比較的手軽に作成できる方法です。 - 公正証書遺言
公証役場で公証人が作成する遺言書で、形式面での安全性が高い方法です。
それぞれに特徴や注意点があり、状況によって適した方法は異なります。
遺言書を作成する際の注意点
遺言書は、形式や内容に不備があると、一部または全部が無効になるケースがあります。
特に、自筆証書遺言では、日付や署名、記載方法の不備が問題になることがあります。
また、内容が抽象的すぎたり、財産や人物の特定が不十分だったりすると、
遺言書があっても解釈を巡って混乱が生じる可能性があります。
こうしたリスクを避けるためにも、作成前に専門家のチェックを受けることが重要です。
遺言書作成を検討している方へ
遺言書には複数の作成方法があり、どの方法が適しているかは人によって異なります。
家族構成や財産の内容、将来への考え方によって、最適な選択は変わります。
「とりあえず書けばいい」というものではなく、
自分の状況に合った方法を選ぶことが、結果的に安心につながります。
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