債権は、ある特定の人に対して一定の行為をすることを請求できる権利です。

物の引き渡しを目的とする債権には特定物債権と不特定物債権(種類債権)という区別があります。

特定物債権とは、特定物の引き渡し(占有の移転)を目的とする債権です。

不特定物債権とは、目的物が種類、数量で指定された(一定の種類の物を一定量給付するべきことを内容とする)場合の債権です。

例えば、車を購入する場合。

中古車を購入する場合、中古車を引き渡してくれという請求権(債権)は特定物債権となります。

新車を購入する場合、新車を引き渡してくれという請求権(債権)は不特定物債権となります。

不特定債権の場合、種類、数量でしか指定されていませんから、どれを引き渡せばよいかを決めなければなりません。

不特定物を特定物(不特定物の特定)です。

民法401条2項には、不特定物債権の特定について規定があります。

①債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了したとき

または

②債権者の同意を得て給付するべきものを指定したとき

①の物の給付に必要な行為が完了したといえるのはどういった場合か、債務の発生原因によって一般的に以下のようになります。

A)持参債務 484条後段(目的物を債務者が債権者の住所又は営業所に持参して引き渡す債務:新車を売主が買主の住所へ持参する)

目的物を債権者の住所において提供したとき(現実の提供)に特定が生じる

B)取立債務(債権者が債務者の住所又は営業所に取立てて給付を受ける債務:新車を買主が売主の販売店まで取りに来る)

債務者が目的物を分離し、引き渡しの準備を整えて債権者に通知をしたときに特定が生じる

C)送付債務(債務者が債務者の住所又は営業所以外の土地に目的物を送り届ける義務を負わず、運送の手配をすることのみを義務付けられている債務:新車を運搬して届けてもらう)

発送時に特定が生じる

不特定物債権が特定されたことにより、特定された物のみが債権の目的物となります。

そのため、債務者は特定された物を引き渡す義務を負います。
また、特定物の善管注意義務を負います。
さらに、特約がない限り、特定と同時に所有権が債権者に移転します(特定物の場合、通常であれば売買契約の成立と同時に所有権は買主に移転しますが、不特定物の場合には、どの物を引き渡すか決まっていないため)。

大野