野村証券金融経済研究所「財界観測」によると、相続分野で長年主役を張ってきたメインプレーヤーは信託銀行でした。信託銀行はおおむね相続財産3億円以上の大型案件を手掛けていました。

3億円以上の資産となると、関係者の数や、資産の分散具合も含め手掛ける手続きも非常に多く、信託銀行のような組織形態に依頼するメリットも多くなったのが、その理由です。

今現在もこの点は変わらないのですが、事態が変化してきたのは特にここ1、2年でしょうか。

3億円以下の相続財産の案件の数が右肩上がりで増えています。

信託銀行に依頼するという発想に至らない相続財産5000万以下という案件もすでに多く発生しています。このうち信託銀行を始め、士業のような相続手続きを手掛ける専門家への依頼率はいまだ低く、相続をなんとなく終了しているのが現状です。しかし、放っておくと相続税で財産のほとんどがなくなることもありますし、相続人を欠落したまま何となく財産を分けてしまい後から遺産分割協議をやり直すことも考えられます。

士業の内、この相続財産3億円未満の手続きを手掛けるメインはやはり税理士でしょう。もっとも相続全体のこれも3.9%にすぎず、90%以上の相続手続きについては誰も手掛けていないのが現状です。

相続手続きは1件につき20種から30種ほどの手続きが発生する上、行政に対する提出書類1つをとってもどこに何を出すのか調べる手間を考えるとこの交通整理をする専門家がいれば、それだけでも残されたご家族にとっては大きなストレス軽減になります。遺産分割協議書の作成は行政書士業務ですし、不動産登記については司法書士という専門家がいますし、銀行手続き、行政手続き、共に多くの手続きを専門家に依頼することお客様はこれから多くなると考えられます。

重要なのは、相続の始まる前から信頼できる専門家と何らかの形で接触しておくことをお勧めします。

部分的にせよ税理士以外の専門家の出番は多いのです。

西本