犯罪の成立要件の一つに違法性阻却事由がないことが必要です。

違法性阻却事由とは、正当防衛でないことのようなことをいいます。つまり例えば、誰かにナイフで刺されそうになったとして反撃にナイフで刺し殺した場合、客観的にはナイフで殺したので殺人罪となります。しかし、なぜ刺し殺したのかということをよくよく見てみると、実はそもそもナイフで刺されそうなところを反撃で刺し殺したという事情があった場合、正当防衛となり殺人ではあるけれど違法ではない、よって犯罪とならないという事になります。

ではこの違法性阻却事由となるかどうかという問題で被害者の承諾という話があります。つまり被害者が殺してくれという場合も正当防衛のように違法がないのではないか、そうだとしたら殺人にはならないのではないかということです。

この点、なぜ違法性が犯罪成立に必要なのかと言いますと、それはある行為が社会相当とは言えないからです。そうであれば違法性が阻却されるかどうかは、承諾を得た動機、目的、侵害の程度結果の重大性等を広く考慮してその行為が社会的に相当と言えればそれは被害者の承諾は犯罪成立に必要な違法性を阻却すると考えます。

例えば、私を殺してと言ってきたから殺したという単純な事案であれば、確かに被害者の承諾が社会的に相当とは言えないでしょう。しかし、老夫婦がもう完全に資金も尽きて、死にたいと何か月も言っている妻をやむをえず殺したその手段も首を絞めてころしたなるべく苦しまないように、みたいなケースでは違法性が阻却されるといったこともありえなくはないでしょう(この場合は同意殺人になることの方が多いかと思いますが)

行政書士 西本