本稿から連帯債務者の関する諸問題を扱う。この辺りは改正が著しい分野且つ実務上有用な問題を多く含んでいるため依頼者からの質問も多い。

連帯債務者の問題を扱う上での前提となる考え方をまずは共有しておきたい。簡単なところから行くといわゆる絶対効と相対効の問題である。

絶対効とは、債権者が連帯債務者一人に対し何らかの行動をすれば他の連帯債務者に対してもその効力が生ずるというものである。

相対効とは、債権者が連帯債務者一人に対し何らかの行動をしても他の連帯債務者には何ら影響のないことを言う。つまり相対効は一対一でのみ効力の生じる問題なのに対し、絶対効は一対全員にその効力が生じるというものである。

まず、その典型例で改正のあったものを説明する。現行法において、履行の請求は絶対効であった。しかし改正民法ではこれが相対効となる。

例えば、債権者が連帯債務者の一人に履行の請求を行って時効を中断した場合(改正後は更新である)、他の連帯債務者との関係でも絶対効であるがゆえに時効は中断されてしまっていた(旧民法434条)。この結果連帯債務者になってしまった者は負担が大きいとの指摘がされていた。これが改正された経緯である。

相対効になったということは、上記の例であれば、他の連帯債務者は時効が中断せずそのまま進行しうまくいけば消滅時効となり債務を免れることになる(新441条)

保証契約もかなり保証人の負担を軽減したものになったことから、連帯債務者も保護の程度が手厚くなったということである。

西本