例えば、賃貸借契約をしていて返す日になったとする。その日に借主が返そうとしたら、火災が起こって燃えてしまった。その時に火災保険からこの賃貸借していた建物に保険金が下りた。

その保険金を返せと貸主は借主に言えるということである。

保険金を返すといういわば、代償手段による返還を条文上認めたということになる。

前回の⑬項で説明した話でいうと、前回の⑬が対象としている範囲は債務不履行であり、つまり債務者がその債務を履行できないということに帰責性があることを前提としている。すなわち債務不履行に対し故意または重過失が必要となる。

他方今回⑭がカバーしている範囲は債務不履行とならない場面、つまり帰責性が存在しない場面、債務を履行できないにもかかわらずそれは債務者の責任ではないといった場面を想定している。

よって、債権発生原因の一つである契約に基づく債権債務の関係が成立したら、その債務が履行されない場合で、それが債務者の責任なら債務不履行となり填補賠償請求、債務者の責任はないといった場合で、相手方にそれに代わる利益がある場合には代償請求となる。

西本